零細バス会社を救え! 「軽井沢死亡事故」実刑判決に見る終わらぬ過当競争、再発防止のために順守すべき4つの条件とは

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2016年に発生した軽井沢スキーバス転落事故の判決が、先日下った。このような悲惨な事故を再び起こさないために必要な四つのこととは何か。

自由化を進めたい主流企業

横転し炎上した大型バス(画像:時事)
横転し炎上した大型バス(画像:時事)

 交通政策における独占禁止法など、競争政策の見直しを図り、健全経営の実現を促進してこそ厳格な運行管理も可能となるが、こうした法制度の改正には長い時間がかかる。

 一方、規制強化の推進は、

「とにかく業界の自由化を進めたい」

と考える主流企業からの抵抗が強い。

 このまま時間が過ぎれば、社会的関心も薄れ、悲惨な事故は再び起きるだろう。現状、運転者不足は深刻化し、インバウンド(訪日外国人)が急回復しているため、貸し切りバスの需要は急増している。

 そこで、筆者(戸崎肇、経済学者)は当面行うべき取り組みとして、次の四点を提案したい。

1.運行会社の厳格な選定と監視

バス車内のイメージ(画像:写真AC)
バス車内のイメージ(画像:写真AC)

 安全な運行を行う体制が整っているかどうか、監査体制のさらなる強化が欠かせないものの、国が行う監査には予算的・人員的に限界がある。

 事実、軽井沢スキーバス転落事故も国の監査不備が一因といえた。自由競争を促すなら、公正競争のルールが順守されているかどうかが厳しく監視されなければならない。

 また、公正競争の条件には安全確保も含まれている。国だけの監査に限界があるなら、社会全体で監査を行うことが求められる。SNSなどを使って、国民全体で監査を行うのだ。

 もちろん、それが競争相手を蹴落とすためのものとなってはならない。匿名ではない、責任をともなう情報提供で

「社会的監査体制」

を構築していくことが求めらる。

2.運転者の継続的な訓練と評価

高速道路を走る貸し切りバスのイメージ(画像:写真AC)
高速道路を走る貸し切りバスのイメージ(画像:写真AC)

 運転者の継続的な訓練と、それに対する評価付けを行うことも重要だ。そのためには、企業に経営的な余裕がなければならない。この点でも国の関与が求められる。

 観光立国を目指すなら、そのインフラとなる貸し切りバスの信頼性を保障する上でも、国策として運転手の質の向上を図るべきだ。

 運転手の技量を評価し、それを基に運転できる

・路線
・時間帯

を決める。そして、運転手に対して新たな技術上のグレーディングシステム(格付け方式)を導入すれば、運転手は技量の向上に努め、待遇の改善を得られるインセンティブが生まれる。

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