零細バス会社を救え! 「軽井沢死亡事故」実刑判決に見る終わらぬ過当競争、再発防止のために順守すべき4つの条件とは
自由化を進めたい主流企業
交通政策における独占禁止法など、競争政策の見直しを図り、健全経営の実現を促進してこそ厳格な運行管理も可能となるが、こうした法制度の改正には長い時間がかかる。
一方、規制強化の推進は、
「とにかく業界の自由化を進めたい」
と考える主流企業からの抵抗が強い。
このまま時間が過ぎれば、社会的関心も薄れ、悲惨な事故は再び起きるだろう。現状、運転者不足は深刻化し、インバウンド(訪日外国人)が急回復しているため、貸し切りバスの需要は急増している。
そこで、筆者(戸崎肇、経済学者)は当面行うべき取り組みとして、次の四点を提案したい。
1.運行会社の厳格な選定と監視
安全な運行を行う体制が整っているかどうか、監査体制のさらなる強化が欠かせないものの、国が行う監査には予算的・人員的に限界がある。
事実、軽井沢スキーバス転落事故も国の監査不備が一因といえた。自由競争を促すなら、公正競争のルールが順守されているかどうかが厳しく監視されなければならない。
また、公正競争の条件には安全確保も含まれている。国だけの監査に限界があるなら、社会全体で監査を行うことが求められる。SNSなどを使って、国民全体で監査を行うのだ。
もちろん、それが競争相手を蹴落とすためのものとなってはならない。匿名ではない、責任をともなう情報提供で
「社会的監査体制」
を構築していくことが求めらる。
2.運転者の継続的な訓練と評価
運転者の継続的な訓練と、それに対する評価付けを行うことも重要だ。そのためには、企業に経営的な余裕がなければならない。この点でも国の関与が求められる。
観光立国を目指すなら、そのインフラとなる貸し切りバスの信頼性を保障する上でも、国策として運転手の質の向上を図るべきだ。
運転手の技量を評価し、それを基に運転できる
・路線
・時間帯
を決める。そして、運転手に対して新たな技術上のグレーディングシステム(格付け方式)を導入すれば、運転手は技量の向上に努め、待遇の改善を得られるインセンティブが生まれる。