スペースジェット失敗に漂う壮大な「虚無感」 国家プロジェクトを破壊する“縦割り行政”と今なお続く“対米従属”の宿痾とは
日本政府の対米依存意識

もうひとつ懸念されるのは、米国との関係に関わる政府の意識である。日本政府は、米国に逆らわなければうまくいくのだ、とばかりに、米国への
「従属と依存」
を国是としてきた。
現在、安全保障分野を中心に、日本政府はかつて以上に従属を深めているが、そうした国のあり方が、スペースジェット開発の甘さに影響していたのではないか。
かつて日本がYS-11旅客機を開発したときには、米国の審査員がテスト飛行を行い、親切に指摘してくれた問題点を修正して、型式証明の取得までたどり着くことができた。
しかし、現代の航空産業界は技術的な基準が厳しさを増しただけではなく、国家間の競争が厳しい世界である。日本の航空産業は、もはや米国にとって守り育てるべき存在ではなく、
「単なる下請け業者」
であり、彼らの市場を荒らそうとする
「邪魔な存在」
でもある。日本の航空機企業や防衛省は、かつてF-2戦闘機の開発などを通じて、そのことを痛感してきた。
MSJ失敗に見る「国のあり方」

現在、スペースジェットの元チーフ・エンジニアが事業に参加した空飛ぶクルマSD-05が、連邦航空局(FAA)の型式証明ではなく、まず国土交通省の型式証明取得に向けて動き出している。
いまだ国際的な技術基準が確立されていない空飛ぶクルマの認証に向けて、日本自らが基準を定めて、実用化を目指そうというのである。
米国に依存する方針に未来がないことを思い知った以上、日本の企業は自主自立を模索するしかないのだが、それが容易な道であるはずがない。
空飛ぶクルマの収益性はさておき、これまでのように縦割り行政の省庁では、こうした挑戦を支えることは不可能である。F-2戦闘機の開発事業においても、事業戦略の所掌が
・防衛庁(現・防衛省)
・通商産業省(現・経済産業省)
・外務省
などにわかれていた日本は、国家の意思を統合して立ちふさがってきた米国に対し、まったく歯が立たなかった。
スペースジェット事業の失敗には、企業や個々の省庁が抱えている問題だけでなく、日本という
「国のあり方」
そのものが、その根底として関わっている。