高速道路の「通勤割」最大50%オフも、素直に喜べない現実! 経済効果の一方、他の交通機関を圧迫する懸念があった

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国土交通省が、地方の高速道路で平日朝夕の通勤時間帯の割引を、休日を含めた毎日24時間に拡大する方針を示した。期待と懸念を解説する。

航路消滅した事例も

瀬戸大橋(画像:写真AC)
瀬戸大橋(画像:写真AC)

 ここで思い出されるのは、既に10年以上前の出来事になってしまったが、2009(平成21)年から2011年まで民主党政権下で行われた「高速道路休日1000円」である。当時、交通量が激増したことは幾度も報じられたが、もうかったのは高速道路だけではない。この制度によって観光消費だけで年間8000億円の効果があったと試算されている。つまり「高速道路が安くなる」だけで、沿線にも波及する経済効果は大いに期待されるわけだ。

 ただ、弊害があるのも事実である。「高速道路休日1000円」が数年にわたって実施されたことで、鉄道や高速バス、フェリーなど、ほかの交通機関は利用者が激減した。とりわけ、瀬戸内海では多くの航路が廃止されるという取りかえしのつかない打撃を受けた。

 瀬戸大橋と並走していた宇高航路では「高速道路休日1000円」が実施された2009年3月には、もっとも深刻な日で利用者が前年の半数に落ち込んだ。この制度では、トラックに関しては、平日深夜の瀬戸大橋の通行料金が半額となる施策も盛り込まれていたことが大きな要因だ。これを契機として、同航路でフェリーを運航している各社は大きな打撃を受け、経営環境が悪化した。結果、この割引制度が終了した後も痛手から立ち直ることはできず、2019年には最後に残った四国フェリーも撤退し、航路が消滅することとなった。本来ならば瀬戸大橋が利用できない時の代替手段ともなる公共性の高い航路だったのに、である。

 このように高速道路の値下げは利用を促進し経済効果を与える一方で、並走するほかの交通機関の経営を圧迫するという側面もある。

 そのためか国土交通省も、今回の見直しには慎重だ。計画では全国一律で実施ではなく、2023年4月より石川県内の北陸自動車道で試験的に実施し、検討した上で広げるとしている。割引制度の変更で利用状況がどう変わるか、報告が待たれる。

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