運賃10円値上げ賛成も、車いす・ベビーカーに優しくない乗客たち 「駅のバリアフリー化」を阻むものは何か?
東武鉄道の総事業費は約1000億円

バリアフリー化の予算は実に膨大だ。
例えば東武鉄道では、バリアフリー料金として2023年3月から2039年3月まで、全線で旅客運賃の加算(定期外では10円)を予定している。この費用をもとに同社85駅で
・ホーム柵
・トイレ洋式化
などの整備を進めることになっている。総事業費は962億6000万円だ。
そのうち、料金加算で見込まれるのは919億8100万円(約95%)である。ほとんどはバリアフリー料金でまかなえるが、それでも少し足りない。それくらい、バリアフリー化には膨大な費用がかかるのだ。
「10円の上乗せは妥当」の声多数

すでに路線の全6駅でホームドアの整備を完了している横浜高速鉄道でも、バリアフリー料金の加算で整備を予定している。
主な整備対象はバリアフリートイレのリニューアルとエレベーター、エスカレーターの更新だ。うちトイレの更新だけでも11億5900万円の予算が見込まれている。
昨今、食料品や燃料の相次ぐ値上げによって家計への負担が増しているが、負担がわずか10円増えるだけでこれだけの設備が整備できるため、反対意見はほぼ見られない。
国土交通省でも制度導入を前にアンケート調査を実施しているが、ここでも
「少なくとも10円の上乗せは妥当」
とする意見が6割を占めている。バリアフリー設備を充実するという目的ならば、誰もが納得しているということだろう。
一方、地方では遅れも

順調に進んでいるバリアフリー化だが、どうしても大都市圏の規模の大きい駅が優先され、地方は立ち遅れている点は否めない。
全国では駅の無人化が進んでおり、それが理由でバリアフリー設備を必要とする人が十分なサポートを受けられないという問題が何度も指摘されている。
全駅に職員を配置することは困難だが、無人駅であってもサポートを必要とする人が健常者と大差なく利用できるための施策が求められる。