全国1か月乗り放題! 「9ユーロチケット」がドイツ国民に与えた大きなインパクトとは

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わずか9ユーロで、ドイツ国内のほぼすべての公共交通機関が1カ月間乗り放題になるチケットが、2022年に期間限定で販売された。そのインパクトと課題を振り返る。

ほぼすべての公共交通機関で利用可

ベルリン郊外ラーンズドルフの電車。ベルリン市内からの往復だけで元が取れる(画像:橋爪智之)
ベルリン郊外ラーンズドルフの電車。ベルリン市内からの往復だけで元が取れる(画像:橋爪智之)

 2022年、ドイツで過去に例のない、公共交通機関用のチケットが発売された。期間限定のチケットで、既に販売も利用期間も終了してしまったが、2023年も5月1日から、同様のチケットが発売される予定だ。まずは、どのようなチケットで、なぜ画期的だったのか、振り返ってみよう。

 それは「9ユーロチケット」――わずか9ユーロ(約1300円)で、優等列車や長距離バスなどを除くドイツ国内のすべての公共交通機関が乗り放題になる、という夢のようなチケットだ。すべての公共交通機関とは、すなわち近郊列車や地下鉄、トラム、路線バス、モノレール、渡し舟などのことで、つまり都市間を結ぶ長距離列車やバスを除けば、ほぼすべて利用可能。しかもこのチケットがすごいところは、なんと9ユーロで1カ月間有効なのだ。

 発売は6~8月限定で、例えば6月のチケットを買えば6月1日から30日まで完全に乗り放題。以前からある、ベルリンとその周辺地域が利用できる1日乗車券が10ユーロだから、9ユーロチケットはこの時点で、すでに1ユーロも得をしていることになる。だがそれだけではなく、このチケットは定期券のように30日間毎日利用でき、しかもベルリンだけではなく、ハンブルクでもケルンでもフランクフルトでも、いや大都市だけではなく、名も知らぬ地方の小村を走る路線バスですら、乗り放題になるのだから恐れ入る。

 このようなチケットが売れないはずがない。チケットは全国の事業者で一斉に販売されたが、ドイツ鉄道だけで6月前半の時点で650万枚を販売した。

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