飛行機内の「無料Wi-Fi」、実は日本が特別だった? 導入から10年、その変遷を辿る
JALの「ずっと無料宣言」続いたANA

この流れが一気に変わったのは2017年6月で、JALが「ずっとWi-Fi無料宣言!」を発表した。JALのこの動きに、多くの路線で競合するANAも対抗し、2018年4月から無料化した。
機内Wi-Fiにおける一連の動きを見ると、
「JALが常に先行し、ANAが追いかける」
形だ。筆者(シカマアキ、旅行ジャーナリスト)は羽田伊丹線など両社の基幹路線を長年よく利用している。その立場から当時を思い出すと
「JALは無料、ANAは有料」
という差は確かに大きいものがあった。
JALグループで地方路線を運航するジェイエアは、2022年12月26日から日本で初めて100席以下の小型機での機内インターネットサービスを開始した。2024年秋ごろまでに所有するエンブラエル190型機(E190)の全機で利用可能予定という。ジェイエアの路線はビジネスの出張利用も多く、ニーズは高そうだ。
世界初の機内Wi-Fiは2004年

機内Wi-Fiは2004(平成16)年5月、ボーイングの一部門であるボーイング・コネクションとルフトハンザドイツ航空が提供した「Connexion by Boeing」が最初とされる。当時、JALやANAも導入していた。その後、2008年から米系航空会社で機内Wi-Fiがサービス提供され始め、徐々に世界中に普及した。
飛行中もインターネットがつながる仕組みは、乗客の通信シグナルが機内設置のWi-Fiアンテナから衛星を通じ、地上の電波塔に送られることでウェブ閲覧やSNS送信などが可能となる。
ただ、地上より機内Wi-Fiの通信速度は遅い。これは、デジタル端末が年々進化する一方、衛星を改良するには電波塔以上の費用が掛かるため。追いついていないからだ。
日本国内線はANA、JALともに無料だが、無料で利用できる航空会社は世界的には珍しく、たいていは有料だ。だが、アメリカのデルタ航空は、2023年2月から米国内の主要路線で無料化し、2024年末までに国際線全路線も無料にすると発表した。今後、デルタ航空と競合する米系航空会社の動きも注目される。
なお、JALグループの短中距離の国際線格安航空会社(LCC)・ZIPAIR Tokyo(ジップエア)は座席に個人用モニターがない一方、機内Wi-Fiと電源を無料提供する。LCCでは機内Wi-Fiすらないこともいまだ多く、ジップエアのこのサービスは画期的といえるだろう。