現存する世界唯一の「零戦52型」をご存じか
太平洋戦争において、世界を驚かせた日本の航空機技術。その代表とも言える「零式艦上戦闘機五二型」は、オリジナルのエンジンをそのまま搭載し、飛行可能な状態で保存されている機体は世界にたった1機だけである。
サイパン島に配属 10機超を米海兵隊が捕獲

プレーンズ・オブ・フェイムに収蔵されている零式艦上戦闘機五二型は、1943(昭和18)年5月に製造された五二型としては初期型に相当している。
五二型が海軍航空本部によって制式採用されたのは同年8月のことであり、当時は戦時中とあって、新型機であっても試験飛行の結果に問題がなければ制式採用決定を待たずに量産発注がなされるのは常だった。
その後この機体は、261空もしくは265空へと配備され長崎、硫黄島をへてサイパン島へと送られた。
そして昭和19年6月のアメリカ海兵隊による上陸作戦の際に、アスリート飛行場において破壊を免れた状態で他の10機余りの機体とともに捕獲され、ただちにアメリカ本国へ送られることとなった。
機体はまず、カリフォルニア州サンディエゴのノースアイランド基地で調査と整備が行われ、4機の零式艦上戦闘機五二型が飛行可能な状態となった。さらに、この機体と他のもう1機は、メリーランド州パタクセントリバー基地において詳細な飛行実験と多くのパイロットによる評価が実施された。
終戦までに実施された飛行試験は合計190時間余りに及んだと言われている。その後、この機体は長らく軍によって保管されていたが、1950年に余剰機体として民間に放出されることが決定した。