現存する世界唯一の「零戦52型」をご存じか

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太平洋戦争において、世界を驚かせた日本の航空機技術。その代表とも言える「零式艦上戦闘機五二型」は、オリジナルのエンジンをそのまま搭載し、飛行可能な状態で保存されている機体は世界にたった1機だけである。

零戦「五二型」飛行可能な唯一の現存機

 三二型は、主目的だった速度性能的に不満が残るものだったことから、わずかな生産のみで終了し、ほどなくして機体を二一型に戻した二二型が投入される。

 その一方で海軍航空本部内では、機体に対する抜本的な改善と武装および装備の強化は必須と認識されていたこともあり、二二型の量産が開始された1943(昭和18)年初め頃から開発作業が始まったのが、後の五二型である。

 五二型は、機体構造と武装を順次強化した五二甲、五二乙、五二丙へと進化を重ね、太平洋戦争中期から末期に掛けての日本海軍主力戦闘機として過酷な戦場で奮闘。戦いは終戦まで続いた。

 さて、そんな零式艦上戦闘機五二型であるが、オリジナルの栄二一型エンジンとともに飛行可能な状態で維持保存されている個体は、世界中で1機のみ。アメリカ西海岸カリフォルニア州チノに施設を構えるプレーンズ・オブ・フェイム・エア・ミュージアムが所蔵する機体である。

 この機体は過去に2回日本国内で展示飛行を行っているほか、近年には地上での展示とエンジン始動のデモンストレーションを行っているという、わが国の大戦機マニアの間ではおなじみの存在でもある。

 筆者(矢吹明紀、フリーランスモータージャーナリスト)は数年前プレーンズ・オブ・フェイムを訪問した際に、日本での展示を終えた後に博物館のファクトリーにおいてシステムオーバーホール中の同機に偶然遭遇。限定的ではあるが、分解状態で内部構造がよく分かる写真を撮影することができた。

 本稿では、この機体の来歴を紹介したいと思う。

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