現存する世界唯一の「零戦52型」をご存じか

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太平洋戦争において、世界を驚かせた日本の航空機技術。その代表とも言える「零式艦上戦闘機五二型」は、オリジナルのエンジンをそのまま搭載し、飛行可能な状態で保存されている機体は世界にたった1機だけである。

戦線拡大とともに露呈した性能的問題

 しかし、十二試艦上戦闘機が零式艦上戦闘機として制式採用に至る過程において、主要構造部に対する新開発の高力アルミニウム合金だった超々ジュラルミンの採用、重量軽減かつ応力向上の面で有効だった構造材に対する地道な穴開け加工、NACAカウリングや全面枕頭鋲に代表される空力的洗練などを通じて、見事に難題を克服することに成功した。

 三菱において主任設計技師を務めたのは、九六式艦上戦闘機と同じく堀越二郎技師だった。

 零式艦上戦闘機は初期量産型だった一一型をへて、太平洋戦争開戦を前に二一型へと進化した。

 しかし日中戦争から太平洋戦争の初期、その優れた多目的性能とともに前線において圧倒的な優位性を発揮した零式艦上戦闘機は、太平洋戦域の拡大とともに次第にその性能上の問題が表面化することとなる。

 すなわち、最高速度の不足と高々度飛行性能の不足、搭載弾数の不足などである。

 このことについては主任設計者だった堀越二郎技師も予想していたことであり、特に最高速度と高々度性能については、いずれ不足を来すことは間違いないとして、エンジンを一段一速過給機の栄12型から、運用高度を上げた一段二速過給機装備の栄21型に強化し、翼幅を縮小するなど機体に対する抗力の低減を図った新型を太平洋戦争開戦前から準備していた。

 これが、1942(昭和17)年6月に制式採用となった三二型である。

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