鉄道会社は現代人の「豊かさ」「幸せ」に根深く関与している 我々はなぜそれに気付かないのか

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幸せや、豊かさ。私たちの生活の満足度を決めるこうした価値観は、いかにして形作られてきたのか。そこには鉄道会社の存在が、切っても切り離せないものとして横たわっている。

「豊かさ」とは大量生産されるモノ

古い家族写真のイメージ(画像:写真AC)
古い家族写真のイメージ(画像:写真AC)

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……ブーシコーのやろうとしたことはかつての貴族文化のエッセンスを物に具象化し、そうしたものの組み合わせを一組み(キット)にして売ることだった。

……個々の物を売るというより、さまざまな調度を組み合わせてひとつの空間を構成し、豪奢の「気分」を売ろうとする。豊かさのイメージを、と言ってもよいだろう。

 なさけないといえばなさけない話だが、ブーシコーのような目先の利く商人がこうしてつくり出していった、こうすればあなたはブルジョワというイメージと現在の自分の実態との差(ギャップ)を埋めるべく、成り金たちはデパート通いに血眼となった。

(高山宏『ガラスのような幸福』)

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「豊かさ」のイメージを作り出したのは、産業革命をへて大量生産されるようになったモノの山だった。デパートは多種多様なものをこれでもかと陳列し、しかもそのモノは、「豊かさ」のイメージを演出するように巧みに配置され、人々の衝動買いを誘うようになっていたのである。

 こうしたライフスタイルを売る消費資本主義は、垂直的にはやがてより下層の階級にも浸透し、また水平的には欧米各国へ伝わって、日本へも押し寄せてくることになる。

 では日本で、ブーシコーのように「幸せ」のイメージをパッキングして売る商法を作った人物はいるだろうか。現代社会の「幸せ」の標準イメージを演出した人物とも言えるだろう。

 思うに、それは阪急電鉄グループの実質的創業者である小林一三(1873~1957)ではないだろうか。

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