エミレーツ・カタールに続く航空会社の誕生か? 仁義なき航空戦争「サウジアラビア編」、なぜエアバスは食い込んだのか
B787に傾倒するサウジアラビア

10月下旬、サウジアラビアが、エアバスのA350、約40機を購入する交渉を行っていると報道された。カタログ価格で、120億ドル(約1.7兆円)に相当する大型の取引だ。
一方で、同国はボーイングのB787に傾倒しており、新しい航空会社であるRIAの購入リストには、合計75機のジェット旅客機がリストアップされているとの報道もあった。いずれの情報も公式発表でなく「ある情報筋によると」と補足されており、サウジアラビア政府はもちろん、エアバス社およびボーイング社のコメントもなかった。
A350とB787は、ライバル関係にあり世界各地で販売競争を繰り広げている、座席350席前後の中長距離のワイドボディ機である。エアバスのA350には、機体サイズや座席数が異なるA350-900とA350-1000があり、またボーイングのB787も、機体サイズや座席数が異なるB787-9、B787-10などがあるものの、現時点では機体の形式まで明らかになっていない。
現時点では、A350とB787いずれも、世界各地とサウジアラビアを結ぶ路線に投入されるものとみられている。
原油に頼らない国づくりの一環

サウジアラビアは近年、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が主導し、原油に頼らない国づくりの一環として観光に力を入れている。今回の動きも、自国に旅行客を連れてくるための自前の航空会社づくりではないかとの見方もある。
実際、コロナ前の2019年は世界で13番目に多い2000万人以上の旅行客がサウジアラビアを訪れている。2005年の旅行客は約1040万人であり、この15年間で右肩上がりに増え続けてきた。旅行客の増加に併せて観光収入も、2005年の約40億ドル(約5600億円)から、2019年には約180億ドル(約2.5兆円)に増加し、国民総生産の2.5%を占めるまでに成長しているのだ。
もちろん、多くは旅行客というより、イスラム教の巡礼地でもあるメッカ、メジナを巡礼するイスラム教徒だろう。とはいえ、2020年のムスリム人口は、世界人口の約4分の1を占める19億人と推計されており、巨大なマーケットには違いない。
また、メッカへの巡礼はハッジと呼ばれており、スンナ派信者の五行のひとつであり、人生のうちに1回は行うべきものとされている。
メッカ、メジナを抱えるサウジアラビアが、巡礼者に向けて世界各地からの空路によるアクセスを自前で用意することは、観光政策の観点から自然な成り行きだと思える。