エミレーツ・カタールに続く航空会社の誕生か? 仁義なき航空戦争「サウジアラビア編」、なぜエアバスは食い込んだのか
変化するヨーロッパとの外交関係

そしてもうひとつ、サウジアラビアがエアバス機の購入をにおわしていることにおいて、ヨーロッパとの外交関係の変化も見逃せない。9月下旬にドイツは、オラフ・ショルツ首相がサウジアラビアを訪問する直前に、2018年から続けてきたサウジアラビアに対する武器の禁輸を解き、輸出を承認していた。
なお、この禁輸措置は、サウジアラビアのイエメンへの関与や、サウジアラビア反体制派のジャーナリスト暗殺を受けて、アメリカおよびヨーロッパ各国で実施されていたものだ。しかしながら、ここにきてヨーロッパ各国が、アメリカより先に禁輸措置から一抜けしたともいえる。
武器の禁輸措置の解除により、ドイツは、3600万ユーロ(約50億円)相当のユーロファイターやトーネード戦闘機の装備品や弾薬を輸出する計画である。併せて、イタリア、スペイン、イギリスとの共同プログラムにより、280万ユーロ(約4億円相当)するA330MRTTのスペアパーツも引き渡されるそうだ。ちなみにユーロファイターは、イギリス、ドイツ、イタリア、スペインが共同開発した戦闘機、トーネードはイギリス、ドイツ、イタリアが共同開発した戦闘機。また、A330MRTTは、エアバスA330-200をベースとした軍用の多目的空中給油機である。
サウジアラビアとヨーロッパの関係が変化するなか、10月上旬の石油輸出国機構(OPEC)プラスの減産決定を受けて、アメリカとサウジアラビアの関係が冷え込んできており、
「エアバスvsボーイング」
の受注合戦にも影を落としかねない状況にある。サウジアラビアによるA350購入記事でも、政治的な状況により今後大きく変わる可能性があると指摘されている。政治的な観点を踏まえるならば、エアバス40機、ボーイング35機の計75機という数字も、エアバスが少し多めという絶妙なバランスに思えてくる。