貴重な「鉄道遺構」はどのくらい残すべきか? 鉄道開業150年で大直面、ライターが感じたJR東の「冷淡さ」とは
アクティビティに生まれ変わった神岡鉄道

高輪築堤の保存をめぐるJR東日本の対応を見ていると、鉄道遺構の保存に
「冷淡な印象」
を受ける。しかし、汐留駅・万世橋駅・桜木町駅といった前例から考えて、必ずしもJR東日本が鉄道遺構の保存に消極的というわけではない。やり次第では、鉄道遺構の保存と商業施設化は両立できるはずだ。
ここまでJR東日本を中心に話を進めてきたが、鉄道遺構の保存はJR東日本だけが直面する問題ではない。高輪築堤のほかにも、大なり小なり全国各地で起きている。鉄道遺構は、大別して
・駅舎
・車両
・線路
の三つに分類できる。ここまで触れたように、駅舎は不動産価値を有する。そのため、廃止されても“金を生む施設”として利活用はしやすい。
一方、車両・線路の利活用は、これまでミュージアムでの保存や遊歩道に転用するといった手段でしか残す道がなかった。しかし、それも時代とともに残す手段が生まれている。
不要になった車両を利活用した事例としては、宿泊施設として転用が考えられる。これも需要が旺盛とは言い難いが、近年はグランピングが人気になっている廃線後に残った線路の利活用では、旧神岡鉄道の取り組みが注目を集めている。
2006(平成18)年に全線が廃止された神岡鉄道(岐阜県、富山県)は、地元有志によって再活用が模索された。そして、レールマウンテンバイクというアクティビティとして生まれ変わった。鉄道遺構を工夫することで、改めて観光資源として活用されることになったのだ。
車両を宿泊施設に転用することもレールをアクティビティへと再活用することも、客を呼ぶツールとしては一筋縄ではいかないだろうが、それでも活用次第では優良資産へ早変わりする可能性を秘めている。
今はコロナ禍や人口減少社会という要因が重なり、廃線の議論がやかましい。すべての鉄道遺構を残すことは現実的ではないが、単に保存・展示という選択肢だけではなく、うまく再活用する道は開けてきた。
鉄道開業から150年。長い歴史から考えれば、鉄道の歴史はまだ短い。それでも鉄道が積み重ねてきたものは、社会を、そして私たちの生活を大きく変えた。それだけに鉄道開業の生き証人とも言える高輪築堤の保存に関して、多くの人が納得できる形で決着することを期待したい。