鉄オタの妄想ではない! 今こそ「夜行列車」を復活させるべき5つの経済的視点

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寝台夜行列車は時代遅れな輸送手段ではない。創意工夫で利益率を向上させられる商品として復活できるのだ。

寝台夜行列車の利益率を向上させる方法

 JR各社が寝台夜行列車の運行に消極的になるのは、複数社にまたがって走行するため、手間を要する割には、利益率が良くないことが最大の要因だ。特に並行在来線を運行する第三セクター鉄道が開業すれば、その事業者との調整が必要になり、北斗星、トワイライトエクスプレスは、車両老朽化を理由に廃止された。

 寝台夜行列車の利益率を向上させるためには、速達性や加減速性の向上だけでなく、機関車の付け替えに手間を要する客車列車ではなく、電車や気動車とならざるを得ない。幸いなことに、トランスイート四季島、トワイライトエクスプレス瑞風は、機関車けん引の客車列車ではなく、前者にEDC方式(非電化対応)が採用され、後者は気動車であるから非電化区間も走行が可能だ。

 昨今は、技術革新が進み、ディーゼルエンジンの騒音も少なくなった以外に、防音技術も向上している。EDC方式や気動車を採用することで、機関車の付け替え要員が不要となり、人件費の削減が可能となる。

 次に、定員を確保するためにはダブルデッカー構造を多用すると同時に、上級A個室のスイート、ロイヤルにはエキストラベッドを設けて、定員を多くする必要がある。そしてB個室寝台車を用意し、定員を確保しなければならない。B個室寝台車は、ダブルデッカー構造の車両に設け、上級A個室寝台車のスイート、ロイヤルは、電動車につくることになる。トランスイート四季島では、電動車であっても車内の静寂性は、E26系「カシオペア」用の客車よりも良好だ。

 3番目として、運賃・料金以外の収入源を確保する必要がある。筆者は、みどりの窓口で販売する以外に、ホテルの宿泊や観光、食事などをセットにした「旅行商品」としても販売することを提案する。そうすれば、企画料や旅行業務取扱料金が得られ、利益率を向上させられる。それほか、広告料収入やロイヤルティー収入を得る方法を考える必要がある。

 広告料収入に関しては、食堂車で提供されるお手拭きに企業広告を入れることで対応できる。ロイヤルティー収入は、寝台夜行列車の関連グッズを開発・販売して得られる。食堂車が連結されている列車は、食堂車で販売すれば良い。連結されていない列車であれば、みどりの窓口で販売する方法がある。

 食堂車と関係するが、北斗星、カシオペアの食堂車は、日本レストランエンタープライズが担当し、トワイライトエクスプレスはJR西日本フードサービスネットが担当していたが、前者はJR東日本の子会社であり、後者はJR西日本の子会社だ。それゆえ列車単体で評価するのではなく、JR東日本グループ、JR西日本グループという形で、グループ全体で増収増益を目指すという発想に切り替えなければならない。

 事実、近鉄がこのような発想で事業を展開している。しまかぜ単独ではいまだ車両の減価償却費が回収できていないため、赤字である。ただ、しまかぜを運行することで、志摩スペイン村や賢島の遊覧船や志摩観光ホテルなどへ乗客が出掛けるだけでなく、ビュッフェも近鉄リテーリングが運営している。そのため、近鉄グループ全体で増益増収を目指している。寝台夜行列車に必要なのは、この発想なのだ。

 既存のJRが消極的であれば、京都丹後鉄道のように鉄道事業に、安全かつ安定した輸送が提供できる事業者に参入させる方法もある。2000(平成12)年3月から鉄道事業法が改正され、安全で安定した輸送能力を有する事業者は、市場への参入が可能となる許可制に規制が緩和された。

 それゆえ、JRという枠組みにかかわらず、京都丹後鉄道という別の事業者に参入してもらう方法も模索しなければならない。この場合、京都丹後鉄道は第二種鉄道事業者となって、JRの線路を借りて運行するため、上下分離経営が実施されている。

 寝台夜行列車は、決して時代遅れな輸送手段ではない。創意工夫で利益率を向上させられる商品として復活できるのだ。少子高齢化や在宅勤務、テレワークはさらに普及するが、本源的需要は決して無くならず、時代はむしろ、寝台夜行列車の復活を模索する時代になっている。

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