鉄オタの妄想ではない! 今こそ「夜行列車」を復活させるべき5つの経済的視点

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寝台夜行列車は時代遅れな輸送手段ではない。創意工夫で利益率を向上させられる商品として復活できるのだ。

復活させる必要性が高い領域

トワイライトエクスプレス瑞風(画像:堀内重人)
トワイライトエクスプレス瑞風(画像:堀内重人)

 寝台夜行列車は、上記五つの観点で復活させなければならないが、筆者はそのなかでも、以下に挙げる三つの領域が重要だと考える。

1.北斗星、トワイライトエクスプレス、カシオペアタイプの豪華寝台夜行列車
2.サンライズ瀬戸・出雲タイプのビジネス寝台夜行列車
3.ななつ星in九州、トランスイート四季島、トワイライトエクスプレス瑞風タイプの超豪華クルーズトレイン

 最も復活させる必要性があるのは「1」だ。新幹線が延伸され、LCCなども台頭し、夜行高速バスの車両もデラックス化して快適になった今日において、個室寝台、食堂車、ロビーカー、シャワールームが、他の輸送モードと差別化する上で不可欠なのだ。

 陸路で北海道へ行く場合、自動車は一度フェリーを使わなければならないため、夜行高速バスを意識する必要はない。これらの列車は観光立国を目指す上で不可欠であり、北海道の日本離れした車窓は航空機では味わえないため、完全に差別化も可能だ。

 これらの列車には、上級のA個室寝台「スイート」「ロイヤル」の組み込み比率を上げる必要があるが、北海道以外へ向かう寝台夜行列車では、全車A個室寝台車はなじまない。また、全車A個室寝台車とすると、定員が減少して利益率が悪くなるため、B個室寝台車を組み込んで利益率を向上させる必要がある。

 次に潜在的な需要が高いのが、「2」の寝台夜行列車だ(夜に出発して目的地に早朝に到着する)。最も復活させたいのが、東京~大阪間である。かつて東京~大阪間は、寝台急行「銀河」が走っていたが、3社にまたがり運行されていたため、車両の老朽化などで利用者が減少、2008(平成20)年3月のダイヤ改正で廃止されてしまった。

 東京~大阪間は世界有数のドル箱区間であり、コロナ禍以前は東海道新幹線の片道辺り、1日の断面交通量が35万人もあった。これだけ輸送量があるにもかかわらず、夜行バスの需要も旺盛なため、仮に新幹線や夜行高速バスより価格面で割高になっても、潜在的な需要は期待できる。

 そこで復活させるべきは、全車が個室寝台車の寝台急行「サンライズ銀河」だ。急行とするのは、特急では距離が短い割に価格面で割高になるからだ。個室の電車寝台となり、加減速性が大きく向上することから、大阪側が高槻や草津、近江八幡に停車させ、東京側が川崎、平塚、藤沢に停車し、小まめに需要を拾うようにしたい。

 そのほかに、上野~羽越本線経由のあけぼのや東京~松山間、東京~呉線経由の広島間、大阪~鹿児島中央間、大阪~新潟間も需要が見込めるため、復活や新規設定を検討しても良いといえる。

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