鉄オタの妄想ではない! 今こそ「夜行列車」を復活させるべき5つの経済的視点

キーワード :
, ,
寝台夜行列車は時代遅れな輸送手段ではない。創意工夫で利益率を向上させられる商品として復活できるのだ。

寝台夜行列車を復活させる必要性

ななつ星in九州(画像:堀内重人)
ななつ星in九州(画像:堀内重人)

 寝台夜行列車の利点としてよくあげられるのが

「寝ている間に目的地まで横になって移動ができ、朝から丸1日を活用できる」

だ。ただ、それだけであれば、夜行高速バスの車両や座席の改善が進んだこともあり、「夜行高速バスで良い」となる。筆者(堀内重人、運輸評論家)は、

・観光産業の発展
・並行在来線の存続/活性化
・中心市街地の空洞化防止
・豊富な選択肢の提供
・三密の回避

という視点からも、寝台夜行列車の復活を考える。

 現在、コロナ禍で観光立国構想は下火だが、収束すれば構想は再開するだろう。日本には、新幹線のネットワークが充実しているため、観光地にも高速で移動できるようになったが、効率一辺倒な輸送手段である点は否めない。

 米国やオーストラリアのような先進国における長距離移動の主力は航空機だが、長距離の寝台夜行列車は、「観光資源」と位置付けて重宝している。特に、オーストラリアは長距離の寝台夜行列車が赤字でも、政府が補助金を投入してまで存続させている。

 これは、寝台夜行列車の損失補填(ほてん)額より、外国人観光客がオーストラリア国内で消費する金額の方が多く、トータルで見れば、補助金を投入して存続させる利点があるからだ。

 日本でいえば、「北斗星」「トワイライトエクスプレス」「カシオペア」のような豪華寝台夜行列車に加え、

・ななつ星in九州
・トランスイート四季島
・トワイライトエクスプレス瑞風

などの豪華クルーズトレインも該当する。

 次は「並行在来線の存続・活性化」だ。新幹線開業で、JRから赤字必至の並行在来線を切り離しても良くなった。切り離された並行在来線は、各県などが出資する形で第三セクター鉄道を設立。ローカル輸送を担っているが、北斗星、カシオペアは、IGRいわて銀河鉄道や青い森鉄道の存続・活性化に貢献していた。これらの列車が自社を通過することで運賃と特急料金が入るため、貴重な収入源だった。

 北斗星、カシオペアが廃止されたことで、IGRいわて銀河鉄道や青い森鉄道は、年間で3~5億円の減収となり、寝台夜行列車が通過することで得られた利益分は、各県が負担しなければならなくなった。つまり、寝台夜行列車は並行在来線を存続・活性化させる上で重要といえるのだ。

全てのコメントを見る