鉄オタの妄想ではない! 今こそ「夜行列車」を復活させるべき5つの経済的視点

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寝台夜行列車は時代遅れな輸送手段ではない。創意工夫で利益率を向上させられる商品として復活できるのだ。

コロナ禍に強い個室寝台車

サンライズ瀬戸・出雲(画像:堀内重人)
サンライズ瀬戸・出雲(画像:堀内重人)

 寝台夜行列車は一時期、ダイヤ改正の度に廃止されていた。その理由は

・車両の老朽化
・新幹線の延伸
・格安航空会社(LCC)の台頭
・夜行高速バスの車両の快適化

などだった。運賃に特急料金と寝台料金が加わるため、確かに他の輸送機関と比較すれば割高だ。

 それでも、「北斗星」「トワイライトエクスプレス」「カシオペア」のような豪華寝台特急は人気があった。もちろん、これらの列車は東京・大阪から北海道を結ぶ寝台特急であり、価格は航空機と比較して割高でも根強い人気があった。だが、北陸新幹線や北海道新幹線の開業を理由に廃止された。現在、定期運転される寝台夜行列車はサンライズ瀬戸・出雲しかない。

 2020年から新型コロナウイルスの感染拡大で、「三密(密集、密接、密閉)」の回避が課題となったが、サンライズ瀬戸・出雲は大半が個室寝台車であるため、長距離を安全かつ安定して移動できる公共交通といえる。観光立国構想はコロナ禍のため、現在下火になっているが、収束すれば再び実施される。結果、寝台夜行列車はインバウンド需要を呼び込む上でも重要な存在となりうるのだ。

 そこで今回は、寝台夜行列車を復活させる理由と復活させるべき領域の列車について説明した後、利益率を高め、JRにとっても魅力的な列車となる施策を提言する。

寝台夜行列車が廃止された背景

E26系客車「カシオペア」(画像:堀内重人)
E26系客車「カシオペア」(画像:堀内重人)

 寝台夜行列車が廃止された最大の理由は、

「国鉄分割民営化の弊害」

だ。東京~博多間で運転されていた寝台特急「あさかぜ」の場合、4社にまたがって運転されていた。そうなると各車の取り分は走行距離で案分されるため、どこの事業者にとっても、利点がなかった。

 特に、車両を所有するJR東日本にとってみれば、東京~熱海間の運賃や特急寝台料金しか入らない。その上、あさかぜなどが東京駅へ到着した際には、寝具類の洗濯などの手間も要していた。

 これでは、JR東日本に車両を改善するという動機付けが起きない。他の

・さくら
・はやぶさ
・みずほ
・富士

の場合、車両はJR九州が所有していたものの、この場合も下関から九州内で寝台夜行列車が発着する駅までだった。寝具類の洗濯も同様である。

 国鉄時代は、寝台夜行列車は

「年間1000億円」

を稼ぐドル箱商品であり、特に東京~九州間の寝台夜行列車は、花形列車だったことから、国鉄の財政事情が苦しかったにも関わらず、車両のグレードアップなどのサービス向上策が実施された。

 国鉄の分割民営化は不採算であるローカル線に厳しいといわれるが、複数社にまたがって走る列車にも厳しく、特に4社にまたがって走行する東京~九州間の寝台夜行列車には、非常に厳しい経営環境になった。

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