鉄オタの妄想ではない! 今こそ「夜行列車」を復活させるべき5つの経済的視点

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寝台夜行列車は時代遅れな輸送手段ではない。創意工夫で利益率を向上させられる商品として復活できるのだ。

利益率だけでは言い表せない利点

出雲市民による歓迎(画像:堀内重人)
出雲市民による歓迎(画像:堀内重人)

 クルーズトレインに関しては、トランスイート四季島、トワイライトエクスプレス瑞風では、1泊2日のコースでも、大人ひとり当たり35万円程度徴収している。これがななつ星in九州になれば、1泊2日のコースでも大人ひとり当たり65万円と非常に高価になる。

 ただし、これだけの高額を徴収したとしても、利益率は北斗星、トワイライトエクスプレス、カシオペアよりも悪い。現在は、車両の減価償却すら終わっていないため、赤字だ。車両の減価償却を終えたとしても、利益率は豪華夜行列車よりも悪い。

 これは1編成当たりの定員が非常に少ない上、乗客三人に対し、サービス要員がひとり付き、ラウンジや手荷物の積み込みのスタッフ、予約などの専属スタッフが必要となるため、人件費がかさむからだ。

 そんなクルーズトレインだが、トランスイート四季島は、IGRいわて銀河鉄道や青い森鉄道、道南いさりび鉄道以外に、しなの鉄道、えちごトキめき鉄道という並行在来線を通過するため、これらの第三セクター鉄道の存続・活性化に貢献している。トワイライトエクスプレス瑞風の場合は、山陰本線の活性化に貢献している。

 ななつ星in九州は、2022年10月から吉都(きっと)線を走行するようになったが、吉都線を通ることで、吉都線のイメージアップにつながる。また、吉都線の駅で乗客を降ろし、専用バスでえびの高原などの観光に出掛けるため、吉都線沿線の住民は吉都線に対して関心を持つと同時に、JR九州も吉都線の車両の整備に力を入れざるを得なくなる。そうしないと沿線住民は非協力的となり、良いサービスが提供できない。

 クルーズトレインは地域住民と協力しながら、サービスを作り上げる列車であり、超豪華な個室寝台車を造り、超豪華な料理を提供しただけでは利用者は満足しない。料理なども、旬の食材を用いた地産地消を実施している。

 沿線住民に協力してもらうには、吉都線などのローカル線のサービスを向上させなければならない。つまり、

「間接的」

に貢献するのだ。もちろんえびの高原への観光客が増えることで、小林市は潤うことになる。

 このようにクルーズトレイン単独で考えれば、利益率は寝台夜行列車よりも悪いが、

・並行在来線の存続/活性化
・亜幹線・ローカル線の存続/活性化
・地域活性化
・JRの旅行業の育成
・優秀な現場の労働者の確保
・自社のイメージアップ

など、利益率だけでは言い表せない利点がある。

 少子化や労働力不足が叫ばれる今日、クルーズトレインへの乗務や車両整備は、優秀な現場の労働者を確保する上で重要であるだけでなく、現場の労働者の士気の向上にも貢献するという視点も無視することができない。

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