鉄オタの妄想ではない! 今こそ「夜行列車」を復活させるべき5つの経済的視点
寝台夜行列車は時代遅れな輸送手段ではない。創意工夫で利益率を向上させられる商品として復活できるのだ。
寝台夜行列車が廃止された背景

三番目は「中心市街地の空洞化防止」だ。上野~羽越本線経由で青森を結んでいた寝台特急「あけぼの」の廃止や、大阪~札幌間を結んでいたトワイライトエクスプレス、大阪~青森間を結んでいた寝台特急「日本海」の廃止で、秋田県の能代や大館、羽後本荘、富山県の高岡などで中心市街地の空洞化が進んだ。
高岡では北陸新幹線が開業したが、新幹線の新高岡駅は、都心部から離れた郊外に設けられたため、高岡市の中心市街地の空洞化が始まっている。
寝台夜行列車は、昔からの中心市街地の駅に発着するため、中心市街地の空洞化防止に貢献している。寝台夜行列車の存続で、駅前の飲食店などだけでなく、路線バスやタクシーの需要も維持される。
次は「豊富な選択肢の提供」。新幹線やLCC、夜行高速バスは移動手段としての要素が大きいが、寝台夜行列車は個室寝台車や食堂車、ロビーカー、シャワールームなど、
「単なる移動手段以外の要素」
も持っており、国民に豊富な移動の選択肢を提供していた。わが国が本当の意味で豊かな社会になるには、画一的ではなく、可能な限り豊富な選択肢も必要だ。
そんななか、コロナウイルスのまん延による三密の回避が不可欠になった。五番目の「三密の回避」だが、新幹線などの鉄道車両や航空機、高速バスでも車内の換気が実施され、5分もあれば空気が入れ替わるが、これらの輸送モードでは、個室の提供は難しい。
寝台夜行列車とフェリーだけが、個室というサービスの提供が可能であり、三密の回避が可能だ。特に、寝台夜行列車は速達性を有することから、長距離を安全で安定、かつ高速で移動することができる公共交通なのだ。