近鉄の運賃引き上げ「17%」は妥当か不当か? アフターコロナで定期券需要大幅減の中身とは
近鉄の運賃改定申請の中身とは

8月30日、運輸審議会より「近畿日本鉄道株式会社からの鉄道及び軌道の旅客運賃の上限変更の認可申請事案」について、申請のとおり認可することが適当であると答申された。
これまでも効率的な事業運営を行ってきた近鉄が、運賃改定申請に至った背景には、経営努力で補えるレベルを超える、沿線人口の減少や新型コロナウイルスの影響による収入減少がある。近鉄は運賃改定後は、老朽化した車両の更新やバリアフリー整備を加速し、安全・安心・快適な輸送サービスを提供するとしている。
今回の運賃改定は、消費税率の引き上げによる改定を除くと、1995(平成7)年9月以来となる。前回の改定率は14.4%であったが、今回は17.0%と前回を上回る率だ。内訳は次のとおりだ。
・改定率:17.0%
・普通旅客運賃:17.2%
・定期旅客運賃:16.7%(通勤18.3%、通学9.2%)
上記を運賃に置き換えると、次のようになる。
・初乗り運賃(3kmまで)160円 → 180円
●大阪難波~近鉄奈良
・普通運賃:570円 → 680円
・通勤定期(1か月):1万9960円 → 2万3680円
・通学定期(1か月):5240円 → 5700円
ちなみに、JR西日本が競合する区間の運賃は次のとおりだ。
●JR難波~奈良
・普通運賃:570円
・通勤定期(1か月):1万6840円
・通学定期(1か月):6890円
通勤定期の値上がりが顕著であり、大阪難波~近鉄奈良間で3720円も高くなる。また、JR西日本と競合する難波~奈良間の通勤定期(1か月)との比較においても、3120円から6840円と2倍以上に差が広がるのだ。
県知事が公述人として出席

この運賃改定について、荒井正吾・奈良県知事も黙ってはいなかった。運輸審議会が開いた公聴会に直々に出席して、
「サービス水準の向上や地域に必要な投資についての約束が行われないまま、値上げによる負担だけを求めるのであれば、県民からの理解は得られない」
と意見を述べた。公聴会は、運賃改定について一般から意見を聞くために設けられているが、県知事が公述人として出席するのは異例のことだった。