自衛隊ヘリに対する「レーザー照射」は犯罪だ! いま問われる一般人のモラル、レーザーポインターは武器になることを忘れるな
一般旅客機に照射される事例も

航空機に向かってレーザーポインターを照射すると、改正航空法では50万円以下の罰金となる。場合によってはこれに威力業務妨害罪(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)と航空危険罪(3年以上の懲役)に問われるかもしれない。
しかし、筆者(日野百草、ノンフィクション作家)の個人的な意見としては、ことの重大さに比べて罪はまだまだ「軽い」。
1977(昭和52)年、横浜市緑区の住宅街に米軍のファントム戦闘機(RF-4BファントムII)がエンジントラブルで墜落、母子3人が死亡した「横浜米軍機墜落事件」を覚えている人も少なくなったかもしれない。これはレーザーポインターによるものではないにせよ、万が一にも航空機が住宅街や繁華街に落ちたら大変な惨事となる事例だ。
1999(平成11)年に航空自衛隊のT-33A(シューティングスター、T-Birdとも)がエンジントラブルで墜落したときも、ベテランパイロットふたりは最後まで操縦し、パラシュートも満足に開かない高度にもひるまず、狭山市のゴルフ場コースまで誘導して命を落とした。住宅街に落とすわけにはいかない。プロの仕事だ、遊びではないのだ。
これほどまでに重大な事案にも関わらず
「音がうるさいから」
「反応が面白い」
「楽しませようと思って」
と、いまだにレーザーポインターを自衛隊機に照射する人がいる。
本稿はあくまで自衛隊の話だが、一般旅客機にレーザーポインターが照射される事例も多く、 2021年には大阪国際空港(伊丹空港)で照射された。2015年にも同空港では松山発伊丹行き全日空1648便(ボーイング737型機)が照射されている。
航空法改正前は本当に多く、国土交通省によれば2010年から2015年までの5年間で194件報告されたという。以降、罰則の強化と販売規制である程度の効果が出たのは確かだが、現在でもレーザーポインターを自衛隊機に照射する人がいるのはどうしたものか。
先に触れた府中市の事件では副操縦士と整備士が一時的に目が見えにくくなったという。恐ろしい、本当に危険なのだ。「音がうるさいから」と府中市街および住宅街にヘリコプターを落としたらどんな大参事となるか。レーザーポインターは使い方を間違えれば兵器となる。操縦中はまぶしいからと目を長く閉じるわけにはいかない。狙われたら本当に網膜を傷つける可能性がある。墜落の可能性があるのだ。