京葉工業地域を支える「第二東京湾岸道路」計画! 長年の争点は環境問題、もはや経済成長だけを考える時代ではない
新時代の道路のつくり方とは
SDGs(持続可能な開発目標)が2015年の国連総会で採択されてから、はや7年。SDGsは、日本においてもなじみのある指標になってきた。前述の通り、日本という国がこれまで以上に、あらゆる分野においてグローバルに展開していかなければならない状況下では、国としてSDGsを順守しているかどうかがひとつの指標となってくる。
これは、道路づくりにおいても同様だ。一昔前の道路づくりでは、事業者が周囲に一定の意見を求めていたものの、結局は「公共の利益のため」という大義名分の下、目の前に貴重な自然環境があろうとお構いなしに道路を切り開いてきた。
だが、新時代の道路づくりにおいてはそうはいかない。「国力のため」とうたいながら経済や公共事業最優先でSDGsを蔑(ないがし)ろにする行為が、逆に国力を下げることにつながりかねないのだ。
そういった価値観が求められる中で、第二東京湾岸道路の動向は今後の日本の道路づくりのベンチマークとなるだろう。日本のSDGs未達(「深刻な課題がある」とされた)項目の中に
・目標14:海の豊かさを守ろう
・目標15:陸の豊かさも守ろう
が含まれているからなおさらだ。そんな情勢を意識してるからなのか、第二東京湾岸道路の計画が再び前進し始めたとはいえ、その動きは慎重だ。
2022年に入り、千葉県国道事務所が管内の他の道路計画とあわせて「千葉県湾岸地域における規格の高い道路」、すなわち実質的に第二東京湾岸道路にあたる道路の計画策定検討業務に関する入札公告を出した。この入札公告の特徴は、「パブリックインボルブメント(PI)」の導入を視野に入れるという条件があることだ。
PIとは、「住民(市民)参画」を意味する。類似した用語に「パブリックコメント」というものがあるが、こちらは住民に対して“意見”のみを求めることに対し、PIは実際に住民に計画策定や意思決定の場に参加してもらい、自治体や民間事業者と共同で事業を進めていくというものだ。PI自体は今に始まったことではないが、これまでの道路づくりの件数と比較するとまだまだ導入事例は少ない。
道路づくりに当たり、自治体・民間事業者・住民の三者が膝を突き合わせて意見を出し合い、利便性・経済・地球環境・住民生活といった多角的な観点を持ちながら事業を進めていく。新時代の道路のつくり方とは、そういうものだ。そして、その新時代の道路のつくり方を、まさにこれから体現してくれるのが、第二東京湾岸道路なのだ。