名古屋横転事故から考える バスの「安全対策」はこれまでどのようにレベルアップし、私たちを守ってきたのか?

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8月22日、愛知県の名古屋高速上で乗り合いバスの事故が発生した。今後の事故防止の教訓となるか。

ドライブレコーダーも普及

ドライブレコーダー(画像:写真AC)
ドライブレコーダー(画像:写真AC)

 公共交通である路線バスでは、事故を踏まえて安全防止策を徹底する意志が強い。それでも事故が起きてしまった際、事故原因を解明し、将来の安全のために生かす装置も進歩している。路線バスで当たり前に見られるようになったのが、ドライブレコーダーだ。

 路線バスへのドライブレコーダーの普及は2000年代からで、事故をきっかけとして各地の事業者は導入を急いだ。2008(平成20)年に、全国で初めて全車両にドライブレコーダーを導入したのは大阪市営バスで、その背景には

「人身事故が年間100件を超えている」

ことがあった。

 2009年から導入した広島県の呉市交通局も、原因は小学生ふたりが市営バスにはねられて死傷した事故だった。いずれも痛ましい事故の再発を防ぐためだった。2019年に神戸市の市営バスが赤信号を無視して歩行者が死傷した事故では、ドライブレコーダーから運転手の操作ミスが判明した。悲惨な事故だったが、精緻な記録が残されていたことから、その後の事故防止に役立っている。バスは過去の事故を教訓として、現在では10年前と比較しても安全になっている。

 そうしたなか、安全性を高めた事例として記して起きたいのが、

「車内への危険物持ち込み禁止」

だ。

 車内の掲示やアナウンスで禁止を周知されることに「そんな人がいるか」と疑問を持つかもしれない。現在ではあり得ないが、昭和30年代までは、乗客が車内に持ち込んだガソリン携行缶に引火し、バスが炎上した事故が幾度も発生している。この事例を挙げただけでも、バスの安全性は常に進歩し続けている。今回の痛ましい事故も、今後の事故防止の教訓となることを願う。