名古屋横転事故から考える バスの「安全対策」はこれまでどのようにレベルアップし、私たちを守ってきたのか?

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8月22日、愛知県の名古屋高速上で乗り合いバスの事故が発生した。今後の事故防止の教訓となるか。

運転手に定められた厳しい規制

アルコール(画像:写真AC)
アルコール(画像:写真AC)

 西日本鉄道は2001(平成13)年、運転手不足が原因の超過勤務から事故が多発し、厚生労働省から指摘を受けた。その後、増員とともにダイヤ改正による減便、深夜バスの廃止によって勤務改善を実施している。

 一方、運転手には勤務時間外であっても安全運行のための規制が課せられる。国土交通省が定める飲酒運転防止のための法令だ。日本バス協会では法令に基づき、飲酒運転防止対策のマニュアルを定めているが、ここでは、

「勤務時間前8時間の飲酒を厳禁とする」

としている。休日が「最低32時間以上の連続した時間」と長めに定められているのは、体内にアルコールが残った状態での運転を防止する意味も含まれている。

 飲酒時間の制限に加えて、乗務前後には検知器によるチェックも実施されている。近年では飲酒が原因の事故はほとんど発生していないが、2015年には大交北部バス(大分県中津市)で乗務後に検知器で調べたところ、呼気1Lあたり0.17mgのアルコールが検出された事例もある。2017年には東海バスオレンジシャトル(現・東海バス、静岡県伊東市)でも乗務後の検査でアルコールが検出されている。いずれも、検知器が正常に作動していなかったのが原因だ。

 飲酒運転の危険性が強く認識されるようになった近年では、意図せず酒気帯びで乗務してしまった場合でも懲戒解雇に至ったケースもある。

 運転手が十分な休息時間を得られるようにする労働環境の改善とともに、アルコールの危険性に対する意識も広がっているが、問題が発生するたびに、関係省庁や団体の対応も速やかに行われている。結果、安全性は時とともに高まっているといえるだろう。

バスを取り巻くさまざまなトラブル

バスの車内(画像:写真AC)
バスの車内(画像:写真AC)

 路線バスでは自動車や自転車との衝突、車内での転倒といった人身事故も避けては通れない。これを防ぐための施策もバス事業者では積極的に行われている。

 川崎市交通局は2018年、車内事故防止のために運転手のアナウンスや着席を確認してからの発車を徹底。この結果、2018年度の車内での人身事故は前年度から10件減った6件となった。それでも、

「着席の確認ミスによって乗客が転倒する事故」
「車いすの乗客に固定ベルトを装着するのを忘れたことに起因する事故」

などが発生している。

 またこの年には保有する全車両に対して、ウインカー使用時に周囲へ音声を流して注意を促すウインカーチャイムを導入し、自転車や歩行者との接触を避けるための装置が向上した。