疑問だらけのリニア「前倒し計画」 一極集中から多極分散への転換は本当に成功するのか
岸田首相「国として支援を行う」

歴代政権はこれまでも、リニア中央新幹線の早期全線開通を目指す意向が強かった。
安倍政権時代の2016年には、国の成長戦略として最大8年間前倒しする方針を表明。実現のために、政府はJR東海に3兆円を貸し付けている。ゆえに岸田政権は、これ以上の整備停滞は容認できないとの意向だ。
2021年年12月には、国土交通省が設置した有識者会議が流域の水資源への影響は小さいとする中間報告をまとめてた。さらに2022年5月には、岸田首相が「環境保全に関する国の有識者会議」を設置することを表明している。
この会議は、環境専門家らが生態系への影響を最小限に抑える方策を検討するものだ。5月29日に山梨県都留市の山梨リニア実験線を訪れた、岸田首相は記者団に対して
「全線開業の前倒しを図るため、来年から建設主体が着手できるように国として必要な指導、支援を行っていく」
と語っている。
静岡県が難色を示している問題を解決し、一刻も早くリニア中央新幹線の全線開通を目指したいという意図が見られる。
候補地で統一していない奈良県

とはいえ、静岡県の問題のみならず、名古屋~大阪間はまだルートすら確定していない。この区間を巡っては、
・三重県、滋賀県を経由し京都駅から新大阪に向かう「京都駅ルート」
・ほぼ一直線で新大阪駅に向かう「新大阪駅ルート」
・三重県から奈良県を経由する「奈良県ルート」
が検討された後、2016年に「奈良市付近」を通るルートが確定している。三重県と奈良県には中間駅が設置される予定だが、特に三重県は鼻息が荒い。
三重県内で駅が想定されているのは、県中北部に位置する亀山市付近だ。現在はJR関西本線の井田川駅と紀勢線下庄駅、東名阪自動車道の亀山インターチェンジ周辺を候補としている。
候補は三つに分かれているものの、亀山市付近ということでは意思一致している三重県に対して、いまだ統一が図られていないのが奈良県だ。
奈良県では、奈良市のほか、県北部の大和郡山市と県北西部の生駒市が候補地として名乗りを上げていた。2022年2月になり大和郡山市は、奈良市付近への誘致に合意をしている。一方、生駒市は候補地の一本化を目指すことには合意しているものの、奈良市への一本化には合意していない。