中国優位の終焉? 日本の自動車部品産業、最大60%「生産性向上」で中国との差が急接近か
低賃金モデルの終焉と新ルール

今の時点で、中国の持つ強みがそっくりそのまま消えてしまうと考えるのは、少し現実味を欠くかもしれない。前述したバッテリーセルのように、コストの開きが縮小しても依然として厚い壁が残る領域があるのも、ものづくりのリアルな一面だ。
しかし、欧州市場向けの自動車部品において前述のコスト差がここまで肉薄するという予測は、
「コストの高い国はものづくりで勝てない」
という、私たちが長く信じ込んできた思い込みを根本から揺さぶっている。リポートの指摘によれば、もし移行が遅れれば西欧では約1.03兆ドル、米国では4400億ドル規模の製造価値が国外へ流出するリスクをはらんでおり、刷新を怠れば巨額の産業基盤そのものを失いかねない緊迫感が、この物語の底には流れている。しかも、この地殻変動の影響は主要国たちの力比べにとどまらない。
例えば、ポスト中国の有力候補として着実に名前が挙がるインドは、2030年までに部品の輸出を1000億ドル規模にまで膨らませるという目標を掲げている。その挑戦を後ろから支えているのが、現地の部品メーカーの3分の2以上がすでに未来型工場の第一歩を踏み出し、さらに3分の1以上が本格的な拡大へと一気にかじを切っているという、驚くほどのスピード感だ。また、欧州市場をすぐ近くで支えてきた東欧の国々やモロッコにしても、これまでの武器だった手の届きやすい人件費が新しいテクノロジーに追い抜かれることへの焦りから、一歩進んだ工場の姿を競うように追い求めている。
これから5年、あるいは10年というスパンで私たちが目撃することになるのは、単純な国盗り合戦のような景色ではないだろう。AIによって工場の効率が劇的に上がる世界を前提に、地球上のあらゆる製造拠点がこれまでの低賃金に頼るモデルからいかにしなやかに抜け出し、新しいものづくりの仕組みに自分たちを合わせていけるか。競争そのものが終わるわけではない。ただ、その競争が行われる土俵のルールが、今まさに、これまでとは違う次元へと心地よく進化を始めている。