「1960年の呪縛」を解く? JR西日本とANA・JALが踏み出した“越境提携”を考える

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JR西日本がANA・JALと結んだ連携は、京阪神―九州で86.9%に達する新幹線シェアの先にある成長余地を広げられるか。鉄道と航空の予約一体化を2030年代に見据え、制度差の壁を越えた移動サービス構築に踏み出す動きだ。

予約開始時期の不一致という壁

共創による顧客体験価値向上(画像:JR西日本)
共創による顧客体験価値向上(画像:JR西日本)

 鉄道と航空の一体的な予約は、多くの旅行者が望んでいるとみられるが、制度面での課題は大きい。最大の問題のひとつは、予約の開始時期が異なる点である。鉄道側はJRグループのマルスシステムに沿って運用されており、現時点では予約時期を含めてどこまで一体化できるかははっきりしていない。

 JRのきっぷは乗車日の1か月前、前月の同日午前10時に発売される。JR西日本が提供する事前申し込みサービスでも、受け付け開始は発売日の1週間前にとどまる。一方、航空はおよそ1年前から予約が可能である。

 インバウンドを計画段階から取り込むには、予約時期の違いをそろえる必要がある。ただし、ここには鉄道と航空の前提条件の違いがある。航空の「約1年前予約」は、ダイヤが確定する前の段階を前提としている。そのため、便名や出発時刻、機材、座席などが後から変わることも少なくない。

 これに対し、JRグループのマルスシステムは、確定した列車ダイヤと車両の運用を前提としている。鉄道では、列車の運行計画を含めた多くの準備作業を積み重ねたうえで座席を販売するため、

「未確定の座席を先に売る」

という考え方はなじみにくい。現在の「1か月前発売」は、仕組み上の制約というよりも、国鉄時代から続く業務の流れに基づくものである。JR西日本がシームレス予約の実現時期を2030年代としているのは、こうした運用の見直しに時間がかかる事情があるためと考えられる。

 なお、航空のダイヤは年2回、1月下旬と8月下旬に確定し、その後は最短で2か月前から予約できる。鉄道と航空の連携を進める場合、この「2か月前予約」が現実的な落としどころになる可能性が高い。

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