デンソーを襲う「450億円」――製造業平均の「3倍」の速さで悪化する「輸送用機械・器具製造」、株価6万円台の熱狂と実体経済の断絶とは

キーワード :
,
金融市場は日経平均6万円台を維持する一方、景気DIは41.5へ2カ月連続で低下。原油高によるコスト上昇と供給制約が自動車産業を直撃し、株価と実体経済の乖離が鮮明になっている。

国内製造基盤の存亡を分ける岐路

2026年4月の国内景気動向(画像:帝国データバンク)
2026年4月の国内景気動向(画像:帝国データバンク)

 これからの先行きは、決してひとつではない。材料が手に入らない状態が続き、上昇したコストを売り値に乗せられない日々が重なれば、持ちこたえられなくなった中小の作り手が次々と姿を消していく。そうなれば、国内で車を組み立てる土台そのものが失われてしまいかねない。中身のない抜け殻のような姿になってしまう懸念は現実味を帯びている。

 一方で、材料の買い付け先を広げ、物資を安定して手に入れる体制を整えられれば、景況感は再び上向き始める。政府による成長への投資や、賃上げの流れが人々の買う力を支えることができれば、景気も底堅さを保てるはずだ。しかし、不安定な空気が強まれば、人々の心理はさらに冷え込むに違いない。5年後、10年後の景色は、今そこにある物不足という難局を乗り越え、国内にある物作りの現場を守り抜けるかどうかにかかっている。

 将来の儲けを夢見る金融市場と、物が届かずに苦しむ現場。このふたつの層が、もはや切り離された状態にある。とりわけ、数え切れないほどの部品を積み上げる車づくりにおいて、材料が届かないことは商いの継続を阻む大きな壁だ。

 投資の対象としての価値が膨らむ一方で、実際に物を作る現場の力が衰えている事実に、私たちはもっと向き合うべきだろう。デジタルの世界へお金を投じるだけでなく、物作りの根っこにある資源を守り、まっとうな取引が行われる環境を整えなければ、産業のしぼみは止められない。

 景気がこれからどの方向へ進むかは、エネルギーの壁をどう越え、コストの分担をどう進めるかによって決まる。この大きな隔たりを埋めるには、先の期待に頼るのではなく、今そこにある物作りの現場を立て直すための、確かな一歩が必要だ。

全てのコメントを見る