デンソーを襲う「450億円」――製造業平均の「3倍」の速さで悪化する「輸送用機械・器具製造」、株価6万円台の熱狂と実体経済の断絶とは

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金融市場は日経平均6万円台を維持する一方、景気DIは41.5へ2カ月連続で低下。原油高によるコスト上昇と供給制約が自動車産業を直撃し、株価と実体経済の乖離が鮮明になっている。

円安神話の崩壊と技能者流出の深刻化

2026年4月の国内景気動向(画像:帝国データバンク)
2026年4月の国内景気動向(画像:帝国データバンク)

 帝国データバンクの調査が映し出すのは、物資の供給が途絶え、労働力が外へと流れ出しているというふたつの厳しい現実だ。中東の緊迫した情勢は燃料代を跳ね上げただけでなく、車づくりに欠かせない材料の調達まで滞らせている。

 混乱を招いているのはナフサの不足である。原油を蒸留して取り出されるこの炭化水素の混合物は、沸点30度から180度程度の成わからなり、エチレンや塗料、インクの原料として使われる。組み立てや洗浄、内装材、タイヤに至るまで、ナフサから生まれる素材は車づくりのあらゆる工程に入り込んでおり、代わりを探すことは極めて難しい。

 世の中が脱炭素へ向かうなかで燃料としての石油需要は減っているが、化学原料としての価値は高まっており、需給のひっ迫がそのまま価格を押し上げている。こうした素材不足によって足元をすくわれている状況下では、収益が削られた現場から腕のある技能者が他業種へ去り、製造の土台が内側から崩れている。

 世の中では、株が上がれば景気が良く、円安は輸出に追い風だと受け取られがちだ。だが、景況感が冷え込んだ事実は、これまでの常識が通用しないことを示している。かつての円安は輸出企業の利益を底上げしたが、今はエネルギーの輸入コストの膨らみが、輸出で得られるはずの儲けを食いつぶしている。

 個人の消費が振るわないのも、人々の節約志向というより、コスト転嫁によって車の値段が上がり、家計の所得が追いつかなくなった結果といえるだろう。需要が自然に減ったのではなく、供給側のコストが膨らんだことで、市場が無理やり縮小させられているのだ。このギャップを直視しなければ、物づくりの現場で起きている収益悪化の本質を見失うことになる。

 今の苦境を抜け出すには、これまでの供給の仕組みを根本から見直さなければならない。車づくりの急所である資源を、特定の場所や素材に頼り切る危うさを取り除くことが求められている。具体的には、植物を原料とする素材への切り替えを進めるなど、調達のルートを広げる動きを早める必要があるだろう。

 あわせて、仕入れ値の動きを素早く売り値に反映させる仕組みを整えることも急がれる。膨らんだコストをサプライチェーン全体でわかち合い、小さな部品メーカーにばかり負担を負わせる商習慣を改めるべきだ。手にした利益を株主に配るだけでなく、現場の土台を強くするための設備や技術に注ぎ込む姿勢こそが、これからの企業の生き残りを左右する。

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