「お客様第一」の終焉? カスハラ主犯は「50代以上の男性」――小田急電鉄が全70駅にボディカメラ導入、その理由とは

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カスハラ1513件、被害者の15%が深刻化――現場の限界が制度を動かした。小田急電鉄は全70駅にボディカメラを導入し、記録と抑止でサービス維持に踏み込む。技術で守る現場と、変わる「客と事業者」の関係を追う。

夜間保守さえ脅かす「執拗な粘着行為」

駅構内のイメージ(画像:写真AC)
駅構内のイメージ(画像:写真AC)

 現場で何が起きているのか。2025年1月に国土交通省がまとめた資料には、目を疑うような事例が並んでいる。

「車内検札時、未発売の座席に着席しているお客様に特急券の確認を求めたところ、「俺が持ってたら、どうするんだよ!」と怒鳴られた。別の座席の特急券をお持ちだったので、座席の移動、変更を提案しようと思っている最中、「お前、俺が特急券持っていないと思っていただろう!死ね!二度と利用しない!」との暴言を吐かれた」

「最終列車において、降車したい駅を通り過ぎて終点の駅まで来てしまったお客さまから「どうすればいいのか、タクシー代金を調べろ」と強い口調で要求された。お調べしている間も「まだか」「遅い」「使えん奴やのー」とプレッシャーをかけられ続け、年齢や出身地、友人の有無などを聞かれ侮辱された。警察到着までの間、20分程度、同様の言動を繰り返し「駅員の態度が気に食わない」と言いはじめ、「表に出ろ」と強要されたが出なかった。警察到着後も、タクシーに乗車するまで約2時間、駅内外での大きな声を出し続けたため、駅の営業終了が大幅に遅れた」

 警察が目の前にいてもなお激高し、業務を力ずくで止めてしまう。こうした数時間に及ぶ拘束は、働く人の心を折るだけでは済まない。深夜の閉鎖作業がずれ込めば、翌朝の安全を支える点検の時間まで削られてしまう。鉄道網を維持するための夜の守りが妨げられることは、乗客全員の安全を脅かす行為にほかならない。

 いつまでも居座り、理不尽な要求を繰り返す振る舞いは、威力業務妨害や不退去罪にも当たり得る。2025年4月からは、東京や北海道などで防止条例が動き出し、客の側が守るべき決まりも示された。これまで日本の接客は我慢の上に成り立ってきたが、話を切り上げ、組織として身を守ることが求められる。

 契約のルールを無視する相手に、サービスの提供を断る。それは、インフラを絶やさないための当然の守りといえるだろう。こうした粘着質な行為を逃さず、毅然とした対応を貫くことは、現場を支える人を守るために避けて通れない判断となっている。

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