「世界シェア7割の牙城」に中国企業が揺さぶりか? ヘッドライトは“光学部品”から“知能プラットフォーム”へ、日欧優位を崩す構造転換の行方とは
中国の通信大手ファーウェイが、自動車の重要保安部品であるヘッドライトを起点に車載体験の再定義を加速している。日欧が世界シェア約7割を握るなか、ソフトとAIを軸に“光の情報化”を武器にする新勢力が、産業構造の主導権を揺さぶり始めた。
物理精度の既存勢力と情報解像度のファーウェイ

世界のヘッドライト市場を見渡すと、日系企業の存在感は依然として大きい。約2割のシェアを握る小糸製作所が首位に立ち、スタンレー電気も1割程度を確保している。日本国内で2割ほどのシェアを持つ市光工業も含め、日系勢の層は厚い。これにValeoやFORVIA HELLA、OPmobilityといった欧州勢を加えると、日欧の企業だけで世界シェアの7割近くを占める計算だ。この盤石な体制は、レンズ研磨や光の向きを操る配光制御といった、緻密なものづくりの積み重ねによって守られてきた。
もっとも、ヘッドライトに多くの役割を持たせる方向性そのものは、さほど新しい話ではない。ファーウェイが進める高度な配光制御や補助灯などは、既存のメーカーもすでに取り組んできた道だ。ホンダは状況に応じて光を使いわけるシステムを実用化しているし、トヨタのカローラ・クロスには、進行方向を路面に映し出すことで歩行者に自車の存在を知らせる仕組みが載っている。
だが、ファーウェイが持ち込んだ技術のあり方は、これまでの進化の延長線上にはない。日欧のメーカーがレンズという「物理的な精度」を磨き上げてきたのに対し、ファーウェイは高性能な半導体による画像処理や、車載センサーとの連携による「情報の解像度」で勝負を仕掛けている。あらかじめ決められた図形を映すトヨタの技術に対し、ファーウェイの「XPixel」は歩行者を検知してその場に応じた内容を即座に描き出す。物理的な信頼性を磨いてきた既存勢力の目の前で、部品の価値がハードからソフトへと移り変わる。そんな今の時代の空気を、この技術は鮮やかに映し出している。