「価格競争が終わらない」 中国自動車“薄利多売の刺客”はどこまで広がるのか? 海外生産340万台という競争前提の変化

キーワード :
,
中国勢の海外生産は2025年120万台から2030年340万台へ拡大し、16か国以上に広がる。価格は2年で2割下落。輸出から現地網へ転じ、競争の軸は製品から連携とソフトへ移った。既存勢は対応の遅れが重い課題となる。

競争の場の変化

中国(画像:Pexels)
中国(画像:Pexels)

 競争の場そのものが変わりつつある。これまでのように車を作って競う形から、関係する企業がつながる網のような争いへ移っている。機械としての性能を高めるやり方から、使い心地やソフトの出来を重んじる流れが強まった。車は移動の道具にとどまらず、通信網につながる情報機器となっている。同時に、完成車を外へ売る形から、現地の社会に入り込む仕組みへと変わってきた。

 こうした変化が重なり、産業の姿は製造中心から、社会の基盤を支えるサービスへと移りつつある。日欧メーカーが車そのものの出来を高める一方で、中国勢は全体の仕組みで主導権を握り、顧客との接点を押さえようとしている。

 中国勢の強みは製品の出来以上に、他社との結びつきの強さにある。比亜迪(BYD)とUber、ZeekrとWaymoの連携は、販売の拡大にとどまらず、移動サービスやデータ、顧客との関係を自らの側に取り込む狙いがある。現地での生産や販売の網、部品の供給網をまとめることで、他社が入りにくい壁を築いている。こうした動きは中南米や南欧、豪州などで同時に進んでいる。

 利益の出どころも変わった。車体や製造の質に代わり、ソフトやサービスが収益を生む場となっている。そのため、すべての性能を引き上げるのではなく、需要の高い機能に力を集中し、それ以外は標準的な水準に抑える考え方が広がった。開発の主導も技術者から全体をまとめる責任者へと移り、携帯端末の業界に近い意思決定が現場に持ち込まれている。

 中国勢の低価格は、賃金の安さだけでは説明できない。部品の共通化や電子制御の集約によって費用を徹底して下げ、開発期間を短くして市場への投入を早めている。国内の厳しい競争が常に効率を高める圧力となり、そこで生き残った企業が産業全体の生産性を押し上げている。

 日欧メーカーは、長年積み上げてきたブランドへの信頼や品質、安全への対応力といった強みを保っており、これらは今も有効である。

 一方で課題も重い。固定化した部品の供給網や慎重な意思決定、ソフトによる収益化の遅れが足かせとなっている。これまでの成功を支えた組織のあり方が変化への対応を難しくし、高い品質を求める姿勢が必要な水準の見極めを鈍らせ、全体の最適な形を妨げる場面もある。

 力はあっても環境の変化への対応が遅れ、その差が将来に影を落としている。品質の安定といった過去の成功が、新たな価値への移行を難しくしているのが現状だ。

全てのコメントを見る