「全然反省していません」あおり運転加害者の57%が“後悔なし”――法秩序を飲み込む「歪んだ正義」の正体
2020年の妨害運転罪創設から5年。厳罰化で違反点数25~35点、免許取消もあり得る中でも、被害経験は34.5%に達し、直近半年でも15.2%が被害を報告。ドラレコ普及66.6%の一方で、あおり運転はなぜ減らないのか。その実態と構造を追う。
抑止策の方向性と強化論

社会はどのような対抗策を求めているのか。チューリッヒ保険会社の調査によれば、あおり運転の防止策として
「さらなる厳罰化」
を挙げる声が73.1%に達した。次いで「道路上の監視カメラの拡充(44.8%)」「ドライブレコーダーの義務化(39.2%)」が続く。被害に直面した当事者ほど、より強権的で物理的な排除を望む傾向が鮮明だ。
だが、法の裁きは常に事後的な介入にすぎない。そこで今、ドライバーの挙動をリアルタイムで捉え、費用負担に直結させる手法が現実味を帯びている。急な加減速や車間距離の詰め方を数値化し、保険料や車両の維持費に反映させる仕組みだ。九州大学の志堂寺和則教授も、ドライブレコーダー義務化の有効性を説く。パイオニアが2024年に実施した調査では、ドライバーの75.8%が
「ドライブレコーダーを設置することで安全意識が向上する」
と回答した。自らの振る舞いが可視化される環境こそが、抑止の土台となる。
自分の運転が常に記録され、それが家計を圧迫するとわかれば、人は嫌応なしに慎重さを選ぶだろう。警察庁は思いやりや譲り合いの精神を説き、調査でも早めの合図や無理な割り込みを避ける姿勢が有効とされている。これらを精神論や道徳の領域に留めておく必要はない。無用なトラブルを回避し、自己の損失を防ぐための「合理的選択」として社会に浸透させる。それこそが、路上の風景を変える現実的な解ではないだろうか。
厳罰という盾と、経済的なインセンティブという矛。この両輪が揃って初めて、感情に支配されたハンドル操作は抑制される。法が個人の内面に踏み込めない以上、外側からの「仕組み」で行動を規定していく段階に来ている。