「赤字1億円は無駄じゃない?」 神奈川の“AIオンデマンドバス終幕”が突きつけた厳しい現実、地域交通再設計への知見は残ったのか

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AIで最適化すれば移動は変わるのか。神奈川・松田町の「のるーと足柄」は累積赤字約9300万円、収支率8.9%に沈んだ。登録者1076人に対し実利用は4分の1。稼働率46%が示した需要の実像とは何か。

登録活用に至らなかった要因

AIバス事業 赤字の教訓。
AIバス事業 赤字の教訓。

 多くの登録者を実際の利用につなげられず、そのまま生かしきれなかった。これがのるーと足柄が苦戦した大きな理由だ。仕組みの使い勝手が住民の期待に届かなかった結果ともいえる。住民が求める場所に停車場が置かれておらず、使いにくさが残った。運営側が見直しを図ろうとしても、行政との調整がかみ合わず、動きにくかった事情もうかがえる。

 一方で、今回の運行で積み上がった記録は、今後の交通を考えるうえで見逃せない材料になる。この結果を不成功の一言で片づけるのは適切ではない。成果を上げる事業は、こうした事例を踏まえながら、より良いかたちへつないでいく。

 車両の稼働率46%という実績は、地域の移動の需要がどこにあるのかをはっきり示している。この記録を生かせば、すべての地域を同じやり方でまかなう無理を避けられる。需要のある拠点間の移動と、狭い範囲での個別対応を使い分ける。そうした効率のよい交通へ移っていく余地が見えてくる。

 今回の取り組みは、地方交通が抱える課題に向き合ううえで、先行例としての意味を持っていたともいえそうだ。

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