「赤字1億円は無駄じゃない?」 神奈川の“AIオンデマンドバス終幕”が突きつけた厳しい現実、地域交通再設計への知見は残ったのか

キーワード :
,
AIで最適化すれば移動は変わるのか。神奈川・松田町の「のるーと足柄」は累積赤字約9300万円、収支率8.9%に沈んだ。登録者1076人に対し実利用は4分の1。稼働率46%が示した需要の実像とは何か。

運行中止に至る赤字拡大の実態

のるーと足柄の延べ利用者数推移(画像:松田町)
のるーと足柄の延べ利用者数推移(画像:松田町)

 2026年3月5日、のるーと足柄は利用の伸び悩みと大きな赤字を受け、運行の中止を発表した。開始時に寄せられた期待とは裏腹に、収益の見通しは立たなかった。運営側と行政の足並みの乱れも、この段階で表に出た。

 朝日新聞によると、累積赤字は約9300万円に達し、そのうち約6000万円を地元の運行会社が負っている。町は2023年度からの2年間で計1億500万円の委託費を投じたが、法人の収支は2023年度に約2900万円、2024年度に約3500万円の赤字となった。2025年度も約2900万円のマイナスが見込まれている。

 この赤字が積み上がった背景には、自治体の事業でありながら、

「現場を担う民間会社に損失の多くが偏る構図」

がある。運営に関わる側からは、採算の立て直しに向けて運行内容の見直しを試みたものの、町側の制約で進めにくかったという声も出ている。

・使いやすさを重んじる「行政」
・事業として続けるための条件を求める「運行会社」

その間で折り合いがつかなかった様子がうかがえる。

 もっとも、この大きな損失が残したものも小さくない。官と民がどのように負担と責任を分け合うのか、その輪郭が見えてきた。今後の交通のあり方をめぐる議論も、抽象論にとどまらず、より踏み込んだものへと進んでいくはずだ。

全てのコメントを見る