「赤字1億円は無駄じゃない?」 神奈川の“AIオンデマンドバス終幕”が突きつけた厳しい現実、地域交通再設計への知見は残ったのか
AIで最適化すれば移動は変わるのか。神奈川・松田町の「のるーと足柄」は累積赤字約9300万円、収支率8.9%に沈んだ。登録者1076人に対し実利用は4分の1。稼働率46%が示した需要の実像とは何か。
登録拡大と実利用の大幅乖離

延べ利用者数と実際の利用者数を見比べると、特定の層が繰り返し使っていた様子が浮かぶ。
のるーと足柄の実際の利用者数は、最も多い月でも345人にとどまった。松田町の人口が約1万人であることを踏まえると、地域住民の日常に広く根付いていたとはいいにくい。さらに、利用登録者数と実際の利用者数の間には開きがある。2024年2月末時点の登録者数は1076人に達し、開始時の3倍以上に増えていたが、同月の実際の利用者数は274人にとどまった。登録した人のうち、実際に車両を使ったのは4分の1に過ぎなかった。
多くの住民が万一に備えて登録はしたものの、日々の移動手段として選ぶには至らなかったとみられる。予約のしにくさや待ち時間といった使い勝手の面で、既存の移動手段を上回るだけの強みを示せなかったことが、利用の定着を妨げた。
この開きを埋めきれなかった事実は重い。ただ、移動の必要を感じている人が1000人以上いたことも確かだ。この差をどう埋めるか。その視点が得られたことは、次の取り組みを考えるうえでの手がかりになる。