「赤字1億円は無駄じゃない?」 神奈川の“AIオンデマンドバス終幕”が突きつけた厳しい現実、地域交通再設計への知見は残ったのか

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AIで最適化すれば移動は変わるのか。神奈川・松田町の「のるーと足柄」は累積赤字約9300万円、収支率8.9%に沈んだ。登録者1076人に対し実利用は4分の1。稼働率46%が示した需要の実像とは何か。

利用急増とその後の伸び悩み

のるーと足柄の収支状況(画像:松田町)
のるーと足柄の収支状況(画像:松田町)

 松田町が2025年11月にまとめた資料を基に、これまでの経過を振り返る。

 のるーと足柄は2023年10月の開始時、延べ利用者が359人だったが、翌月には2041人へと増えた。実際の利用者数が233人であることから、

「一部の利用者が月に9回から10回ほど繰り返し乗っていた」

様子がうかがえる。その後、2024年4月には延べ利用者が2693人、実際の利用者が345人に達し、一定の広がりを見せた。ただ、それ以降は利用者数が伸び悩んだ。2024年12月には延べ利用者が1550人、実際の利用者が239人に落ち込み、低調な動きが続いた。

 最終的な収支率は約8.9%にとどまり、車両1台が1日に運んだ人数は約20人だった。一方、2025年6月時点の車両の稼働率は46%を記録している。この数値からは、

「車両が稼働時間の半分近くを実際の運行に充てていた」

様子が見て取れる。地域に一定の移動需要があったことも確かだ。伸び悩みの背景には、特定の利用者の日常の足としては根付いた一方で、幅広い住民の移動手段としては広がりきらなかった事情がある。

 もっとも、この46%という稼働の実績は軽く見られない。どの場所で、どのような動きがあったのか。細かく残されたデータは、これからの地域交通をより実効性の高いものへと高めていくための土台になるだろう。

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