「不戦の盾」か「格好の標的」か――日米共同備蓄は本当に日本を救うのか? 現状わずか「7日分」、高市政権が挑む安保戦略の虚実
拠点整備を支える需要前提

分散型であれ集中型であれ、拠点の整備にはいくつかの前提がある。第一は、原油に頼る社会が続くことである。拠点の整備には、施設の建設や維持にかかる費用に加え、防衛の負担もともなうためだ。石油への依存が高い間は、拠点が価格や供給の安定に寄与し、費用に見合う可能性がある。
ただし、世界は全体として脱化石燃料に向かっている。電動化や代替燃料の広がりにより、長い目で見れば重要性が下がるおそれがある。OPECの2024年版「世界石油見通し」では、2023年から2050年にかけて世界全体ではインドを中心に需要が伸びる一方、OECD加盟国では22.1%減るとされている。拠点整備に投じた資金の回収よりも先にエネルギー転換が進めば、需要の落ち込みにより資産価値が損なわれる可能性がある。現時点での必要性が高くても、長期間にわたり必要かどうかは慎重に見極める必要がある。
第二の前提は、「優先調達権」が確実に働くことである。原油供給の拠点は、市場取引が機能している間は価格の安定に寄与する。しかし、有事に日本向けの供給が不足した際、備蓄が本当に優先して回されるかは別の問題である。日本は拠点という器を用意する立場にあるが、最終的には産油国との取り決めに左右される。
赤沢亮正経済産業相は3月24日の記者会見で、サウジアラビアとクウェートの石油会社に貸し出している国内タンクから、共同備蓄分を5日分放出すると明らかにした。これは優先調達が実際に行われた例といえる。一方、韓国では、優先購入の行使前に海外企業との契約が進み、200万バレルのうち90万バレルが国外に売られた例もある。今後も産油国との関係次第では、優先調達が十分に機能しない可能性は残る。その実効性は安定した国際関係に左右され、継続的な外交の積み重ねが欠かせない。