「受注は増えても作れません」 国策に追い付かない「造船業界」、1万人超の人手不足が浮き彫りにする供給網の深淵とは
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政府が1兆円を投じても解消できない、日本造船サプライチェーンの「人手不足」と「投資停滞」。1万8766社、6兆円規模の産業圏は、2035年受注倍増計画の前に最大1.7万人の空白リスクに直面する。
供給網の逼迫

6兆円。この規模に安心している場合ではない。今回の調査が示したのは、日本の造船業が「受注はあるが生産が追いつかない」という、現実的な供給リスクに直面しているという事実だ。
政府が2035年までに建造量を倍増させる目標を掲げ、1兆円規模の官民投資を打ち出すのは、経済安全保障の観点から妥当だろう。しかし、基盤となる1万8766社の現場では、12.82%の企業が債務超過にあり、厳しい状況が続いている。いくら計画を描いても、実際に鋼板を曲げ、溶接し、エンジンを据え付ける人員が1.2万人、あるいは1.7万人不足すれば、その目標は達成できない。
注目すべきは、13.9%という高い生産性向上の要求だ。デジタル化やDXの導入は進める価値があるが、職人の手作業や現場の調整を簡単に置き換えることはできない。現状で必要なのは、先端技術への投資だけでなく、適正な船価の還流によって供給網全体を維持することだ。ティア1企業の利益率が改善する一方で、ティア2以下の投資意欲は過去最低水準に落ち込んでおり、供給網の脆弱性が顕在化している。
日本の造船業が開発力だけに依存する状況に陥るのか、それとも製造能力を維持するのか。その分岐点は、政府の掛け声ではなく、末端の町工場が10年後を見据えた設備投資の判断をできる環境を整えられるかどうかにかかっている。
読者は決算書の数字だけでなく、サプライチェーンの現場の状況にも目を向ける必要がある。6兆円規模の経済圏が安定して動く日は、現場の投資判断ひとつひとつにかかっている。