「受注は増えても作れません」 国策に追い付かない「造船業界」、1万人超の人手不足が浮き彫りにする供給網の深淵とは

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政府が1兆円を投じても解消できない、日本造船サプライチェーンの「人手不足」と「投資停滞」。1万8766社、6兆円規模の産業圏は、2035年受注倍増計画の前に最大1.7万人の空白リスクに直面する。

人手不足の現実

「造船業界」サプライチェーン分析調査(画像:帝国データバンク)
「造船業界」サプライチェーン分析調査(画像:帝国データバンク)

 受注を倍増させるという目標は、現場に大きな負担を強いる。現在の能率のまま受注額が1割増えた場合でも、サプライチェーン全体で最大3300人の新規採用が必要になる。受注が2倍になれば、最大1.2万人分の従業員を確保しなければならない。しかし、少子高齢化の影響で従業員数が現状より1割減ることを想定すると、不足する人数は最大1.7万人に膨れ上がる。

 この穴を人手で埋めない場合、1人あたりの生産性を大幅に高める必要がある。従業員数を増やさずに受注額が1割増えれば平均0.1%、2倍なら3.9%の向上が求められる。さらに従業員が1割減れば、受注1割増で9.2%、2倍では13.9%もの生産性アップが欠かせない。こうした水準は、現場での努力の範囲を大きく超える。船舶の建造や修繕、複雑な配管作業は、依然として人の手による調整が中心だからだ。

 13.9%という高い要求は、人手不足を「デジタル活用」で補おうとする姿勢に見える。しかし現実は甘くない。この労働力不足は、中韓勢との納期競争力にも直結する。受注が2倍になっても、船台が物理的に埋まれば、船主は日本を離れ、他国に注文を出すだろう。1.2万人から1.7万人の空白は、日本が市場から脱落する可能性を示しているのだ。

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