「F1既得権益」の崩壊?――キャデラック参入が映し出す「米国資本の力学」、22台体制で揺れる欧州閉鎖モデルとは
2026年、F1は22台体制へ拡大し、キャデラックが参入。欧州の閉鎖的伝統と米国資本の拡大戦略が交錯し、放映権や開催権料を軸とした巨大ビジネスとしての姿が鮮明になった。
欧州と米国の思想

F1は、参加者の信用と継続を重んじて運営されてきた。1978年、バーニー・エクレストンがF1製造者協会(FOCA)の会長に就任して以来、製造者を守る体制を固め、収益を適切に割り振ることで参戦の安定化を図った。F1の運営手法や商業権利の分配を定めた「コンコルド協定」は、長期的な安定を実現する仕組みである。
1980年代後半から1990年代中盤にかけては、低予算でもチームを結成でき、多くの組織が入れ替わり立ち替わり現れた。しかし、協定があっても活動を維持できる組織は限られていた。1990年代後半になると、風洞実験や電子制御、流体解析(CFD)など開発コストが跳ね上がり、メーカー参入も加わって競争のハードルは急激に上がった。
その結果、新規参入者は激減した。加えて協定の改定により、実績に応じた報酬制度が整えられ、既存チームが利益を独占しやすい構造に変わった。この数から質へのかじ取りが、後にリバティ・メディアによるチーム資産価値の底上げにつながる。
対照的に米国の発想は、条件を満たせば誰でも門戸を叩ける
「開放性」
を重視する。実力や信用は、参入後の結果で示せばよいという考え方である。組織の枠を広げることで全体の価値を高めるスタイルは、米国の4大スポーツが採用するエクスパンション制に典型的に表れる。MLBが球団数を増やし、日米の野球界に大きな収益差を生んだことは多くの人が知るところだろう。
F1におけるキャデラック参入も、この拡大による価値の創造という米国流の資本論理が、欧州流の既得権益の保護を押しのけた結果といえるだろう。