「もう国際秩序は頼れません」 自動車産業に迫る“サプライチェーン不安定化の危機”──力がすべてを決める世界の現実とは? 米著名投資家の警告から考える
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著名投資家のレイ・ダリオ氏が警告する「戦後秩序の崩壊」により、自動車産業は効率追求から国家の生存を懸けた「銃とバター」の調達へと変質した。1930年代のドイツが年8%超の成長で国力を示したように、現代のモビリティも地政学戦の武器と化している。剥き出しの「力」が支配する新局面で、企業が生き残るための冷徹な資本・技術戦略を、歴史の循環から浮き彫りにする。
都市とインフラが抱える歪み

戦後の都市は、安価な燃料と安定した貿易、摩擦の少ない国際物流を前提に拡大してきた。ダリオ氏が指摘する地政学的対立では、領土や同盟を巡る争いが、物理的な基盤を直接脅かす。1941年、米国が日本の全資産を凍結し、パナマ運河を日本船に閉鎖した措置は、インフラ自体が相手を追い詰める手段となることを示している。その結果、日本の貿易の4分の3が断たれ、石油供給の80%を失う事態に至った。
資源供給の掌握は、他国の生存を左右する普遍的な論理である。外部依存率が高い社会構造は、対立が激化する「第6ステージ」では国家や都市の急所となる。1940年代の資源争奪は、エネルギーや物流路の確保が通常の経済活動を超え、生き残りをかけた闘争であることを物語る。
現代の都市を支える巨大な交通インフラや物流ネットワークも、大国間の力の均衡が崩れれば、一瞬で機能不全に陥る危うさを抱える。ダリオ氏は、1500年以降の欧州紛争サイクルを分析し、長期の平和と繁栄が暴力的な外部戦争の火種を育む性質を明らかにした。現代都市の歪みも、過去の繁栄のなかで蓄積された依存関係が、秩序の崩壊とともに表面化した結果である。