「もう国際秩序は頼れません」 自動車産業に迫る“サプライチェーン不安定化の危機”──力がすべてを決める世界の現実とは? 米著名投資家の警告から考える

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著名投資家のレイ・ダリオ氏が警告する「戦後秩序の崩壊」により、自動車産業は効率追求から国家の生存を懸けた「銃とバター」の調達へと変質した。1930年代のドイツが年8%超の成長で国力を示したように、現代のモビリティも地政学戦の武器と化している。剥き出しの「力」が支配する新局面で、企業が生き残るための冷徹な資本・技術戦略を、歴史の循環から浮き彫りにする。

ダリオ氏が示した「無秩序の段階」

レイ・ダリオ氏の著作『世界秩序の変化に対処するための原則―なぜ国家は興亡するのか』(画像:日本経済新聞出版)
レイ・ダリオ氏の著作『世界秩序の変化に対処するための原則―なぜ国家は興亡するのか』(画像:日本経済新聞出版)

 ダリオ氏は、現代を大国間の力学がむき出しになる局面と位置づける。国際関係は法よりも、力の強さが支配する野生の論理に従っている。国連のような国際組織は、加盟国のなか中で最も強力な国家を超える権限や富を持たない。結局、米国や中国といった大国の意思が世界の行方を左右する。強国同士が対立するとき、法廷での解決ではなく、互いを脅し合い、実力行使で合意を引き出すか、徹底的に戦う道を選ぶことになる。

 国家間の対立は、貿易戦、技術戦、資本戦、地政戦、軍事戦の五つの領域で展開する。これらは独立した現象ではなく、時間の経過とともに相互に連動し、緊張が増す。歴史を振り返れば、最初は関税や輸出制限による経済的応酬から始まり、それが技術遮断や金融制裁へとエスカレートし、最終的に武力衝突に至る。一度軍事戦が起これば、他の四つの領域も最大限に武器として使われる。

 モビリティ産業は、この五つの領域すべてに深く関わる例外的な存在だ。原材料の確保から半導体やソフトウェア開発、金融システム、エネルギー供給、インフラ整備まで、あらゆる要素が国家の富や権力、そして背後の思想と直結する。力が支配する時代において、モビリティ産業は地政学的圧力を最も受けやすい構造に置かれている。

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