「ガラパゴスの壁」を壊すのは“BYDラッコ”か?――ヤナセの看板と「300km」の航続距離、新興ブランドが飛び越える信頼の溝とは
世界で430万台、前年比41.3%増。BYDは日本では3742台にとどまるが、2026年に軽EV「RACCO」とヤナセ協業で反攻に出る。航続300km、実質200万円以下を掲げ、市場構造そのものを揺さぶる構えだ。
垂直統合モデルの強み

BYDの脅威の源泉は、垂直統合という事業構造にある。バッテリーメーカーから発展した背景を持ち、EV製造費用の大半を占める電池を自社内で完結させる。材料価格の乱高下に対しても耐性が強く、価格の調整幅を広く維持できる。この強みが、多額の投資を要する日本市場専用モデルの開発を可能にしている。
「輸入車は高価」という固定観念を打ち破り、高性能かつ廉価な価格を提示する。部品メーカーとの調整に追われる水平分業型の組織とは異なり、市場の要望を製品仕様へ反映させるまでの時間が短い点でも優位性を誇る。この開発速度の差が、2026年以降の市場浸食の勢いを決めることになる。
一方で、購入者が抱く数年後の価値に対する不安は払拭されていない。日本の顧客が重視する中古車価格の不透明さは、新興ブランドにとっての弱点となる。だがBYDは、自社の金融機能を活用し、高い残価を設定する手法を選ぶ可能性がある。将来発生する評価損のリスクをあらかじめ広告宣伝費として処理する経営判断――堅実性を重んじる国内メーカーの金融モデルを無効化する、資本の力による市場獲得手法だ。
こうした財務戦略によって、ユーザーが負担する総保有コストを人為的に引き下げ、国産車からの乗り換えを促すだろう。