「もう他人の都合は待たない」 ホンダ、4500億円で買い取った“支配権”。LGを身軽にしてまで貫く、自前主義への回帰
ホンダは北米EV合弁のオハイオ工場建屋を28.6億ドルで買い取り、44億ドル規模・年40GWhの供給網を自社管理へ。EV需要の変動と政策リスクを見据え、供給停止回避と意思決定の主導権確保を狙った実務的防衛策だ。
協業の新たな段階

今回の変更が示すのは、自動車メーカーと電池メーカーによる協業が次の段階へ進んだことである。市場が急拡大した時期には、対等な出資比率による合弁体制が協力の象徴とされていた。
ところが、普及の速度が鈍化する現在の局面では、最終的に誰が損失のリスクを背負うのかという課題が前面に押し出されている。この段階は、協業を続ける前提を保ちながら、資産の保有、操業の実務、そして資金の負担という個別の責任範囲を明確に分け合う過程といえる。
ホンダが建屋という物理的な基盤を保持し、LGESが技術的な運用によって価値を生む形態は、協力関係の破綻を回避しながら、各社の役割を最適化した現実的な帰着点である。これは、共同所有という形式上の平等を維持することよりも、工場の稼働を続け、製品の供給を滞らせない実益を優先した枠組みである。こうした手法が一般化すれば、今後の合弁事業は資本の対等性よりも、供給の安定化と資金負担の実効性を重視した形へと変化していく可能性がある。
ホンダが投じる約28.6億ドルという金額は、非常に大きな支出である。ただし、年産能力40GWh級の巨大な供給拠点を計画通りに稼働させられるかどうかは、次世代の競争に参加するための最低条件となる。市場環境が不透明であればあるほど、自らの判断で供給網を維持し続けること自体が、他社に対する優位性へとつながる。
今回の一手は、EV時代のサプライチェーンが将来への楽観的な見通しに依存するのではなく、不測の事態における責任の所在をあらかじめ織り込んだ、実務的な契約によって運営される段階に入ったことを示している。