「もう他人の都合は待たない」 ホンダ、4500億円で買い取った“支配権”。LGを身軽にしてまで貫く、自前主義への回帰

キーワード :
,
ホンダは北米EV合弁のオハイオ工場建屋を28.6億ドルで買い取り、44億ドル規模・年40GWhの供給網を自社管理へ。EV需要の変動と政策リスクを見据え、供給停止回避と意思決定の主導権確保を狙った実務的防衛策だ。

需要低迷時のリスク

マーケットチャートのイメージ(画像:Pixabay)
マーケットチャートのイメージ(画像:Pixabay)

 この判断が常に最善の結果をもたらすとは限らない。ホンダは供給の遅延というリスクを回避する権利を得たが、その対価として、将来的に資産の価値が目減りし、経営の足かせとなる恐れを引き受けている。

 大きな懸念は、需要が伸び悩む状況下で稼働率が上がらず、膨大な固定費だけが手元に残ってしまう事態である。建屋を所有した時点から減価償却費や維持費が発生するため、生産が低迷すれば投資の回収期間は際限なく延びていくことになる。

 事実、米国では税額控除の撤廃を受けた2025年11月に、EV比率が6.3%まで低下した。米国の情報サービス会社エドマンズ(Edmunds)は、2026年にはこの数字が6.0%まで落ち込むと予測している。

 ブルームバーグNEFは米国の将来的なEV比率を27%、国際エネルギー機関(IEA)は20.6%と見込んでおり、以前のような楽観的な見通しは後退している。需要の回復が想定よりも緩やかであれば、工場を動かしても利益が出ず、固定費の回収も進まない状態に陥る。

 合弁会社からのリース料によって投資を回収するモデルを導入しても、リスクが完全に消えるわけではない。操業が振るわなければ合弁会社の採算が著しく悪化し、ホンダに対する支払能力そのものが損なわれるからだ。

 結果として、ホンダは稼働率の低い大規模な不動産を抱え続けることになる。今回の仕組みは、成功すれば自社の供給体制を守る盾となるが、市場の動向を見誤れば、固定費が経営を圧迫する諸刃の剣となる。

 成否を分けるのは、2026年以降に投入する車両の魅力だけではない。政府の政策が普及の速度を左右し、市場の受け入れが遅れれば、資金の回収は長期化する。ホンダはこの取引で自らの意思で事業を運営する権限を得たが、その権限を行使しても市場の需要そのものを生み出せるわけではない。投資した資産が将来的に重荷となる可能性は、最後まで拭い去ることができないのだ。

全てのコメントを見る