もはや絶叫マシン? 貨物船の船員があえて「一番後ろ」で寝泊まりする5つの理由

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貨物船の居住区は安全性と経済性から船尾に集中する。しかし、代替燃料時代を迎え、船首配置が騒音やタンク容量、視界確保の面で再評価されつつある。実現の可能性が現実味を帯びる。

船首配置が注目される背景

貨物船(画像:Pexels)
貨物船(画像:Pexels)

 では、なぜ船首側に居住区を置く案が出るのだろうか。まず、騒音や振動の影響を避けられる点が挙げられる。通常、居住区は船尾側の機関室の上にあるが、主機(メインエンジン)が稼働すると振動が壁を伝わり、大きな騒音が発生する。この騒音は

「騒音コード」

と呼ばれる基準が設けられるほどである。さらに、主機の振動で居住区や煙突(ファンネル)が共鳴するリスクもある。一般的な船舶では、主機と構造物の共鳴を避けるため補強を行っている。しかし、居住区が船尾に無ければ、この騒音や振動のリスクはなくせる。

 次に、代替燃料タンクの配置スペースを確保できる点も魅力だ。温室効果ガス(GHG)規制により、従来の油燃料からLNGやメタノール、アンモニアなどの低排出燃料へ移行が進む。しかし、燃料タンクの配置が課題になる。現在の代替燃料船の多くは、居住区の横や後ろに大容量タンクを置く構造だ。その際、居住区の大きさがタンク容量を制約する。代替燃料は油に比べて発熱量が低いため、従来と同程度の航行距離を確保するにはタンクが大きくなる。船尾から居住区を無くせば、大容量タンクを効率的に配置できる。

 さらに、船橋(ブリッジ)の視界を確保しやすくなる。船首にブリッジを置けば、前方に遮るものがなく、視界がクリアになる。

 しかし、貨物船で船首に居住区を置くことは、技術面でも経済面でも大きな課題を抱えている。

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