次なる「北極星」はどこか? 脱炭素と経済合理性の新・均衡点【短期連載】「2035年エンジン車禁止」という幻影(5)

キーワード :
, ,
EUは2025年末、「2035年エンジン車禁止」を撤回した。BEV一択政策はLCAで10万km走行が前提という現実に直面し、限界が露呈。技術中立と多様性を軸に、ポスト2035年の新ルール設計が始まる。

エンジン禁止撤回という政策転換

EU本部(画像:Pexels)
EU本部(画像:Pexels)

 2021年に掲げられた「2035年エンジン車販売禁止」という野心的な目標は世界を震撼させた。だが、わずか数年でその梯子ははずされた。2025年12月16日、 欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会が発表した「35年以降のエンジン車容認」という事実上の撤回案。これは、理想に燃えた欧州が現実の前に折れた歴史的転換点といえる。中国製EVの猛追と、自国メーカーの悲鳴、そしてエネルギー安保の崩壊。本短期連載では、この「EVシフト狂騒曲」を地政学、産業競争力、消費者心理の三つの視点から総括する。欧州の戦略的敗北と、あらためて評価されるトヨタのマルチパスウェイ戦略。インフラの壁や政治的妥協の先に、自動車産業が辿り着く脱炭素の新たな均衡点を探る。理想から現実への回帰を通じ、次なる競争の行方を占う。

※ ※ ※

 2025年12月の年末、欧州委員会は「2035年エンジン車禁止」の撤回を発表した。技術の多様性を踏まえれば、この決定は大きな転換点といえる。バッテリー式電気自動車(BEV)一択に傾いていた歪んだ政策から、脱炭素を現実的に進める路線へ舵を切ったからだ。

 一方で、多様性は秩序の揺らぎもともなう。「エンジン車禁止」という単一の目標が消えた今、自動車産業はポスト2035年を見据えた新たなルール設計を迫られている。

全てのコメントを見る