なぜ金型「無償保管」は続いたのか――自動車産業と取適法施行【連載】自動車部品業界ウォッチ(5)

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自動車業界はEVシフトの揺り戻しやハイブリッド回帰で変革期を迎える一方、下請け企業に不当な負担を強いる金型問題が相次ぐ。2024~25年には4220個の金型不正保管事例も発覚し、新法「取適法」の施行で監視と保護が強化される。

金型転用による新規事業への挑戦

取適法の適用基準(画像:政府広報オンライン)
取適法の適用基準(画像:政府広報オンライン)

 金型問題は暗い話題が多いが、最近日経新聞で再利用の前向きな事例が報じられた。岡山に拠点を置く備前発条株式会社の取り組みである。

 備前発条は自動車用シートのヘッドレストやアームレストなどを手がける受注者側の企業だ。同社は自動車用部品の金型を転用し、スポーツシートで知られるブリットと共同で一般市場向けの高級チェアを開発した。オフィスやガレージでの使用を想定している。

 報道によれば、備前発条もかつて金型を無償保管していた時期があり、まさに金型問題の中心にあった。そこで同社は直接取引のあるシート製造会社だけでなく、シート製造会社に影響力を持つ自動車メーカーにも働きかけ、金型の転用許可を得た。中小企業が発注側の大企業に働きかけ、金型を活用した前向きな事例である。

 金型は有償で保管しても直接の利益を生まない。しかし、備前発条のような取り組みが増えれば、新たな事業展開の可能性は広がる。

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