戦場で武器・弾薬を運搬! ニュース報道では分からない「軍事ロジスティクス」の深淵
「テロとの戦い」の時代のロジスティクス

先にも触れたように、国家の正規軍同士の戦争を想定した従来のロジスティクスのあり方は、今日、その有用性を徐々に失いつつあるように思われる。
併せて、自己完結を旨とする従来のロジスティクスの態勢も、大きな見直しを迫られている。テロやゲリラとの戦いに象徴される「新しい戦争」の時代の要請に応じた、新たなロジスティクスのあり方が求められる。
つまり、従来、自己完結を旨とした主権国家の軍隊が、今日の国家の枠組みを超えた紛争や活動――例えば非通常戦争(非対称戦争)や国連平和維持活動(PKO)――にいかに対応できるか、また、ロジスティクス業務の多くを民間企業に委託せざるを得ない今日の社会状況に軍隊がいかに対応できるかが問われている。
さらには、伝統的な事態対応型のロジスティクス態勢から、事前対応型のものへの移行も求められるであろう。テロやゲリラに象徴される非通常戦争が多発する今日、最前線と後方地域の境界(線)はますます曖昧になってきており、時としてこうした区分は無意味ですらある。
ある軍人の言葉を借りれば、ロジスティクスは決して「魅惑的(グラマラス)」な領域ではない。それにもかかわらす、戦争に勝利するためには必要不可欠な領域である。
近年、食糧安全保障やエネルギー安全保障、さらには経済安全保障をめぐって活発な議論が展開されている。例えば、日本の食料自給率はカロリーベースで37%とされ、エネルギー全般の自給率は12%とされる。半導体の不足も大きな問題となった。だが、例えば船舶や航空機などの移送手段が使用できず、鉄道や道路に代表される交通インフラが遮断された場合、東京の食料自給率は1%にとどまるという。
ここに、今日のグローバリゼーションという時代状況下でのサプライチェーンの確保をめぐる問題が出てくる。物資の流れ(フロー)は「経済の血脈」とされる。だからこそ、生産あるいは調達から小売り消費に至るまでのサプライチェーン全般を円滑に統合することが重要となる。確認するが、ロジスティクスとは人々の生活の基盤であり、インフラである。軍事ロジスティクスは、戦いの基盤である。
日本は今後、そもそも「後方」と表現されあまり注目されることのない軍事ロジスティクスの領域に、どれだけのヒトや資源を充てることができるのであろうか。
ウクライナでのロシア軍の軍事行動から推測するに、同国軍は限られた国防予算の中でミサイルや航空機などの「正面装備」に資源を投入し過ぎ、弾薬や補修部品に代表されるロジスティクス、さらには「継戦能力」に対する施策がおろそかになっていたと感じざるを得ないからである。